ぼたん鍋とはイノシシの肉を用いた鍋料理です。グツグツ煮込むとその脂身が縮んで牡丹の花のようになることや、脂肪に縁取られた肉を皿に盛り付けると牡丹の花に似ていることからその名がつきました。
まずはイノシシの話
ニホンイノシシはかつて青森にも生息していましたが、現在は、東北では阿武隈川周辺が、日本海側では福井県が北限とされています。青森県で滅びたのは1880(明治13)年頃。南方由来で脚が短いイノシシは、雪深い青森の山中では逃げ足が遅く、マタギらの標的になりやすかったのです。
本州最北端の下北半島 むつ市脇野沢では、20年以上前から純粋イノシシの飼育に取り組んできました。獰猛なイメージですが本来はとっても臆病な動物。ちょっとしたストレスでも事故死や発育不良につながります。加えて過酷な下北の冬。イノシシの繁殖と飼育には大変な苦労があったようです。国内で流通するイノシシ肉の約85%が輸入で同10%が天然(捕獲)、飼育はわずか5%と言われるところからも、イノシシの飼育がいかに大変かがわかります。
イノシシ肉のおいしさ
イノシシ肉の赤身は濃い紅赤色。豚肉に比べるとやや硬さはありますが、繊維はきめ細やかで、ひと味違う歯ごたえと濃厚な味わいがあります。そして、最もおいしいと言われるのが真っ白で雑味のない脂肪。豚のようなベタツキがなく、あっさりして、それでいて甘味があります。赤身に対して白身と呼ぶのがふさわしいしっかりした脂肉です。
そしてぼたん鍋
そのイノシシ肉でつくる「ぼたん鍋」。むつ市脇野沢では、イノシシが一番美味しい11月~3月の期間だけ、主な旅館や民宿、食堂で食べることができます。この地区のぼたん鍋はうま味噌仕立て。源タレで有名なあの上北農産加工と共同開発した専用タレをベースにしているんです。味噌タレにゴボウや白菜、きのこなどを入れ、コトコト泡が出てきたところでイノシシ肉を放り、さらにじっくりと煮ていきます。「うま味の強い白身」はよく煮るのがコツ。煮込むほどにやわらかくなり、かむほどに味が出てくるイノシシ肉は、一度食べたら病みつきになること間違いなしです。
イノシシ肉は今別町や平内町のイノシシ牧場でも手に入りますし、青森市内ではアップルパレス青森の日本料理「京彩」でおいしいぼたん鍋を食べることができます。(期間限定・要予約。2,500円~)
まさに今が旬のぼたん鍋。一度味わってみてはいかがでしょか。
by 義人
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