青森県立郷土館で現在開催中の『境界に生きた人々』を鑑賞してきました。
エントランスのパネルでは、三体の金銅聖観音像がやわらかな微笑みであたたかく出迎えてくれます。
さて、今回のテーマにある「境界」。北にも中央にも属さない北東北、「ボカシの地域」で、独自のアイデンティティをはぐくみ、交易の機会にも恵まれ、豊かな文化を形成していた「境界」の人々の様子を遺物を通して感じ取ることができる展覧会なんです。
展示室の最初の展示コーナーには、古墳時代の集落跡から発掘された鉄製のバックルなどとともに、北海道系の土器、いわゆる「続縄文文化」の遺物が紹介されています。
鉄やロクロを必要とする須恵器などの古墳時代を象徴するものと、縄文的な土器が混在するあたりが「ボカシ」の地域の「境界」の生活文化って感じですよね。
また、八戸の丹後平古墳群からは、律令政府との関わりを示す和同開珎や、朝鮮半島産とされる獅子のような顔が施された大刀柄頭などが紹介されています。ロマンを感じますね。
この古墳文化はなぜか八戸などの太平洋側に見られ、その後の時代の文化は、海運の発達からでしょうか、日本海側の方が太平洋側より先に波がきているそうで・・・。ミステリーですね。
また、境界に生きてきた人々の象徴として誇りと威厳を示しているともいえる悪路王の首像がドーン!!
これは、朝廷軍に抵抗した蝦夷の英雄、アテルイの生まれ変わりともいえるものなのですが、時代を越えて、それを征服した坂上田村麻呂の坐像と仲良く(!?)並べて展示されているのも面白いですね。
そして、驚きなのが、915年頃の十和田火山の噴火によるシラス洪水で埋まった建物跡やコメやアワなどの穀物、日本海側との交流を物語る出羽型長胴甕や須恵器などが発掘されているということ。
青森県と秋田県にまたがるエリアは、日本のポンペイだったんですね♪
そして、またまた驚きなのが、日本最北の須恵器窯跡が五所川原であるということ!!
保存状況が良好な13基の窯跡が、国史跡となっているんです。
県外の遺跡から発掘された須恵器も、ここ五所川原の須恵器工人の集落で焼かれたものが多いらしいですよ。
中央の文化を取り入、水田などを作るようになり生活にゆとりが生まれた頃の遺跡からは、斎串、神像、仏像の手、馬形土製品など信仰や祭祀の遺物も出土しています。
新幹線新青森駅建設に伴う土地区画整理事業により行われた青森市の新田遺跡からは、檜扇や木簡・石帯など、中央政府との間の政治的関係をうかがわせる資料が出土しています。
東北新幹線全線開業の年に、区画整理事業により出土した遺物を見られるなんて、嬉しくなっちゃいますね。
そして、こんなものも♪
なんと、大仏さまのパンチパーマです(笑)♪
そして、日本海に面した十三湖岸に位置する港湾都市遺跡「十三湊遺跡」。南北約2km、東西最大500mに及ぶ広大な遺跡です。
十三湊を根拠とした安藤氏は、自らを蝦夷の末裔と位置づけ、独特の勢力を築きました。
日本海交易によって、莫大な富を築いた安藤氏の当時の力は、アジア大陸からも交易船がやってきたということで、中国産・朝鮮半島産の陶磁器に加え、タイ産のものも発見されているほど!!
鎌倉期には、蝦夷支配を任され、南北朝期には幕府・朝廷から信頼を得た安藤氏は、「日之本将軍」と呼ばれるようになり、北東北に君臨しました。
安東(藤)愛季(1539-1587)が、織田信長や豊臣秀吉から書状をいただいていることからも、その勢力がうかがえますよね。
展示の最後で待っていてくれるのは、三体の金銅聖観音像♪
1300年ほど昔のものらしいのですが、リーフレットなどで右下で微笑んでいらっしゃるのが、我が青森県おいらせ町にある聖福寺さんの聖観世音菩薩立像です。
右上が秋田県、左が岩手県に伝わっている聖観音像。
これを三体並べて、しかも正面からだけではなく、背面からも側面からも鑑賞できる展示がされています。
なんだか有難~~い気持ちになれる展示品です。
その他にも、岩木山北麓から出土された鉄生産に関連する遺物だったり、南部地方が馬産地だったことを証明してくれる雀印の馬印だったり、貴族や武士の宴会や儀礼の場で使われたという面白い顔が墨で描かれた「かわらけ」だったり、ご紹介しきれない程、見所いっぱい、お宝がいっぱいの展覧会ですので、是非、出掛けてみてくださいね♪
コチラで予習して行くのもオススメです♪
by Kuu
《境界に生きた人々》
会期:2010.9.17(金)-10.24(日)※会期中休館日なし
9:00-18:00(入館は17:30まで)
会場:青森県立郷土館(青森市本町2-8-14 017-777-1585)
入館料:一般500円、高校・大学生240円、小中学生は無料
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