先週から降り続いた大雪により酸ヶ湯は国内最高積雪深を観測。酸ヶ湯には首都圏のメディアが殺到し、全国から注目が集まった青森ですが、一面の雪に覆われた青森の農家の人たちは、春が来るのをじっと待っているように思われがちですが、そんなことはありません。
ストーブ列車や地吹雪で有名な津軽鉄道の終着駅中泊町の佐藤さん御一家は、果敢にも冬にアスパラガスを栽培しています。
猛烈な地吹雪で一寸先が見えない日でも、アスパラガスのハウスの中は、まるで春のような光景が広がっています。外と中のギャップが凄いです。
冬のアスパラガスは「促成アスパラガス」と呼ばれていて、その栽培方法は
1 広大な畑で、春から夏にかけて太陽をたっぷり浴びながら根に栄養を蓄えさせる
2 葉や茎が枯れる晩秋に、根っこごと畑から掘り起こし、ハウスに密植栽培する
3 12月に入ったら、根の部分を温める
4 根を温めることで、アスパラガスは「春が来たのかな?」と思い込み休眠から覚め、
ニョキニョキと芽を出し始める
5 津軽平野に地吹雪が舞う1月から3月まで毎日収穫する
アスパラガスの生体を巧みに利用した栽培方法です。
冬期間スーパーなどで販売されているタイやメキシコ産などのアスパラガスは、見た目は太くて美味しそうですが、苦みやえぐみがあります。また、根に近い部分は筋っぽくて食べられません。一方、促成アスパラガスは、甘みとアスパラギン酸などのうま味成分が際立ち、根に近い部分まで美味しく食べられます。もちろん収穫期間は無農薬です。収穫したてのアスパラは、水分がたっぷりで、生でも食べることができるほどです。ゆでたてにマヨネーズもとても美味しいですが、おすすめはアルミホイールにくるみ、焼きいものように食べる方法。
さらに佐藤さん御一家が凄いのは、アスパラガス栽培の加温に、世界に一つだけの独自の「薪暖房システム」を使っていることです。地元の山から伐採された薪を燃やして、ストーブの上のステンレスタンク(400リットル)に入っている不凍液を温めます。温められた不凍液は、市販の灯油ボイラーを経由してアスパラを栽培している土中を床暖房のように循環し、薪ストーブに戻ってきます。薪ストーブの薪がなくなり不凍液の温度が低下すると、灯油ボイラーに自動的に切り替わるシステムになっています(下記イメージ図)。これらのシステムは御主人の達雄さんが作りました。
補助暖房として廃油ストーブも使っています。燃料は地元小学校の給食センターから出る使用済みの米油や子供たちが各家庭から持ち寄った廃食油。廃油の対価として学校給食にアスパラガスを提供しています。カーボンニュートラルの薪や産業廃棄物として処理される廃油を利用するなど、経済的でかつ環境に配慮したエコな栽培。地元の子供たちの食育活動にも貢献しています。
佐藤さんのアスパラガスは市場を経由して全国に出荷されているほか、ネット通販や地元の直売所でも購入できます。是非、青森の冬の味覚を御賞味ください。
by さっちゃん
問合せ イネ子の畑から
住 所:中泊町大字薄市花持
TEL:090-4554-0988
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