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物書きたちの青森旅 その2 寺山修司編

青森の人 | 2018-05-02 11:00

 春間近の2018年3月、作家の吉永みち子さん、大岡玲さん、角田光代さんが2泊3日かけて青森を旅して歩いた。皆さまの心に、青森はどう響いたのか。今回、案内役を務めた地元・青森市出身の物書き・山内史子が、僭越ながらその模様をお伝えしたい。

 太宰治の出身地である津軽を満喫していただいた後に皆さまをお連れしたのは、三沢の「寺山修司記念館」である。寺山は、太宰と同じ青森高校出身。おふたりの後輩であり、彼の俳句の才が昔から秀でていたと授業中に聞かされていたわたくしにとっては、太宰先輩同様にひけらかしたい存在だ。
 小川原湖畔に立つ記念館は、雑木林のなか、ピエロの仮面が異彩を放っていた。劇団「天井桟敷」の舞台を模した館内の景色もまた、濃密でリアルな寺山ワールド。その舞台下には、時代を感じさせる12の机。引き出しを開けると、それぞれ年代に沿った遺品が入っており、さらには関連する映像が机上に映し出されるしくみだ。詩作、俳句、芝居、競馬、ボクシングなど、そのテーマは多岐にわたっている。
 寺山が作詞を手がけた、カルメン・マキの歌う『時には母のない子のように』が流れるなか、吉永さんがしじみじと振り返る。
「寺山さんのチャンネルの多さに、当時は皆、ついていけなかった。マルチな才能が、うさんくさいと思われていたんですよね」
 吉永さん曰く、文章の世界の人が芝居に手を出した、と眉をひそめる向きもあったという。
「私も気になりながら、最初は遠巻きにしていたのだけど、馬がつなげてくれた。寺山さんの競馬のエッセイ、すばらしかったんですよ」
 大岡さんもまた、吉永さんと似たようなスタンスだったのが興味深い。
「映画をはじめ作品にはふれていたものの、どこか距離感を感じていたんですが、短歌の言葉の使い方にゾクゾクしたんですよね」
 2017年8月6日に75の演目が市内各所で同時に行われた、幻想市街劇『田園に死す』三沢編の映像に釘付けになっていたのは、角田さんだ。
「昔、観た芝居には、泥臭い、アングラ臭がある暗い世界だ、という偏見を持っていたんです。でも、この映像ではふつうの街中でふつうの人が劇に参加して楽しんでいる。70年代の発想が、現在でも絵になることにびっくりしました」
 わたくしはといえば、館長の佐々木英明さんがなんと、映画『書を捨てよ町へ出よう』の主役だったと聞いてドギマギ。
「映画館の暗闇の中で、そうやって腰掛けて待ってたって何も始まらないよ」
 壁に映し出された若かりし頃の佐々木さんの姿と彼が語るセリフに、学生時代にこの作品を観た、オールナイトの映画館へとタイムスリップしていた。共感や理解があった言えば嘘になるが、とてつもなく衝撃的だったこと、その後しばらく、動揺を引きずったことを覚えている。
「寺山さんの世界は、祭りの後のよう。祭りっていうのは、死者と交流する場所なんですよ。年を重ねると、そういうことがわかってくるのかもしれない」
 そんな吉永さんの言葉とともに、「百年たったら帰っておいで」という寺山の声が耳に残った。
 その日の夜は、市街劇が行われた三沢の街へと繰り出すことに。米軍基地の人々も訪れるアメリカン・バーを巡る、バー・ホッピングのツアーに参加したのである。
折しも当日は、吉永さんの誕生日。数日前に年を重ねた角田さんも一緒に、たいそう旨いパンケーキを花火で飾っての乾杯の後は、ガイドさんのお導きではしご、はしご、はしご。入るのを躊躇しそうな構えの店でも、案内していただけると気楽に扉を開けられるのが嬉しく、ビール、テキーラ、ジン、ウイスキーと、飲んで、飲んで、飲んで……。
 えっ、楽しかったかって? 寺山先輩の言葉をお借りしよう。そうやって腰掛けて待ってたって何も始まらないよ。皆さまもスマホを捨て、三沢の街へ!

次回、「物書きたちの青森旅 その3 八戸ブックセンター編」へ続きます。

三沢市寺山修司記念館
住所:青森県三沢市大字三沢字淋代平116-2955
電話:0176-59-3434
Misawa Night Hoppers
問い合わせ&申込みメールアドレス:338nighthoppers@gmail.com
Webサイト三沢市寺山修司記念館
Misawa Night Hoppers

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