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Story2北国ならではの食の知恵を訪ねる

伝承料理から学ぶ、生き抜く知恵。

貝森やまゆり会

「貝守やまゆり会」代表 中澤幸子さん

女性農業者による起業(農村女性起業)は、全国に増え続けています。
中でも東北は他地域と比べても多く、2012年度に農水省が調べたデータによれば、国内全事例数の26%が東北に集中。青森県では376件の起業例があります。
特に南部地方と呼ばれるエリアでは、厳しい気候と風土のなかで、しっかりと食べつなぐための知恵が、郷土料理には凝縮しています。
連綿と受け継がれてきた「母の知恵」を繰り出し、青森ならではの暮らしぶりを、舌で知り、胃袋で吸収できるような取り組みをしている団体のひとつが、三戸町で活動を続ける「貝守やまゆり会」。代表は中澤幸子さんです。

美味しくも、たくましい。南部地方の、食べつなぐ知恵。

藩政時代、南部氏の城下町として栄えた三戸町。
夏が冷涼なため稲作が難しく、冬は寒さに閉ざされるという気候の中で生き抜くために、この町にもまた食べつなぐための知恵が盛りだくさん。

「寒干しだいこん」
「寒干しだいこん」

凍てつく川の水でだいこんを何度も晒し、冷気に当てて乾燥させる「寒干しだいこん」はこの土地に古くから伝わる保存の知恵です。昔はどこの家でも軒や畑に自家製の寒干しだいこんを吊るし、雪に閉ざされる冬場の食料としていました。
寒干しだいこんは、秋じまいの大根でつくるのが地元の常。秋掘りの大根を土の中で眠らせておくと、ゆっくり熟成し、より濃厚な味になるからです。
大寒の頃、しまっておいた大根を取り出して仕込みを始めます。寒いほど美味しく仕上がるので、作業は決まって厳寒の日。
家族全員が協力しながらひと冬分の寒干しだいこんづくりに励みます。

スーパー栄養食、凍み豆腐

豆腐を冬の寒風で凍結乾燥させた「凍み豆腐」にも生き抜く知恵が詰まっています。
昔はどこの農家でも大なり小なり大豆を播いていて、寒さが厳しくなる頃には、家族が協力してひと冬分の凍み豆腐を作ったものなのだとか。

「貝守やまゆり会」の凍み豆腐づくり

「貝守やまゆり会」の凍み豆腐づくりは、12月から1月にかけてのほぼ毎日。
スゴイのは、大豆をすり潰す工程から豆腐を手作りするという点です。
普段私たちが食べる豆腐と、凍み豆腐用の豆腐が大きく異なっているのは水の割合とにがりの量。
凍み豆腐特有の美しさと食感を出すため、水の割合を増やして薄い豆乳をつくり、にがりも多めに加える必要があるため、豆腐からつくるというわけです。

一気に豆腐を凍らせる

できあがった豆腐は、適当な厚さに切り揃え、すのこに並べて屋外で一気に凍らせます。
すると翌朝にはきれいな飴色の凍り豆腐ができあがります。
それを1枚ずつワラで編み、 再び屋外で1〜2ヶ月ほど乾燥させると、凍み豆腐のできあがり。

屋外で1〜2ヶ月ほど乾燥

「凍み豆腐」は、スポンジ状で汁をよく吸収するので、どんな料理にもよく合います。
この地方でポピュラーなのは凍み豆腐の味噌汁。凍み豆腐からジワッとにじみ出る出汁の味わいは、なんとも言えない優しさに溢れています。

凍み豆腐の味噌汁

凍み豆腐の煮しめもよく食べられています。これは、凍み豆腐だけを醤油や砂糖で味を整えた出汁で煮染めたもの。
イカを始めとした他の具のうま味が溶け込んだ出汁を吸い込んだ凍み豆腐の味わいの“深さ”には、ひれ伏すしかありません。

凍み豆腐の煮しめ

厳しい冬を食べつなぐ知恵

凍み豆腐の主成分はタンパク質と脂質で、タンパク質は一般の豆腐の7倍、脂質は8倍です。サポニンも豊富で、水分は少ないものの、豆腐と同様にカルシウムやマグネシウム、鉄分などのミネラルをたっぷりと含んでいます。
このため、骨粗鬆症や貧血の予防にも効果が期待できるという説も。
また、消化も良いので、病み上がりの栄養補給にも適しています。
栄養的にはカロテン、ビタミンCが少ないので、緑黄色野菜と組み合わせるとより優れた食事へ出世。
また、カルシウムや鉄分の吸収を高めるため、ビタミンDが多い鮭や鰈と一緒に調理するのが理想ともいわれています。

「じゅね餅」

先達の教えを忠実に守りながら、郷土の伝統の味と加工・調理の技を伝え続けている「貝守やまゆり会」は、貝守地区内全63戸の女性が参加して活動を続けています。
現在は町内の農産物直売所「SAN・SUN産直ひろば」で定期的に料理を提供・販売中。名物も多々あります。例えば「酒まんじゅう」は出品すれば即完売。
県内で“じゅね”と呼ばれるエゴマの実を擦り潰したペーストを小麦粉の団子に塗って焼き揚げる「じゅね餅」は、胡麻ほど小さなじゅねの粒を一つひとつより分けて選別する必要があるなど、とにもかくにも膨大な手間がかかるため「三戸を中心とした特定の地域の女性にしかつくれない」とまでいわれています。

よもぎ餅 よもぎ餅 「貝守やまゆり会」の様子

会員が春先に摘んで年会費代わりに納めるよもぎの若葉は、これまた大人気の「よもぎ餅」へと出世して一年中提供されています。

南部地方の食卓

中澤幸子さんを筆頭に繰り出される美味しくもたくましい知恵を味わって、南部地方ならではの暮らしぶりの深みを体験して見ませんか?

貝守やまゆり会

SAN・SUN産直ひろば
0179-22-3266 三戸町川守田西張渡39-1
9時-18時 1/1休
WEBサイトはこちら
※貝守やまゆり会の出店スケジュールはお電話にてお問い合わせください

貝守やまゆり会 SAN・SUN産直ひろば

貝守やまゆり会 SAN・SUN産直ひろば
三戸町川守田西張渡39-1
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9時-18時 1/1休
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