それが料理であれ工芸であれ、手しごとに必要以上の(笑)テマヒマをかけるのも、青森ならではの暮らしぶり。その妥協の無さが、実用性と美しさをともに兼ね備えた逸品を生み出したりもするのです。
例えば「こぎん刺し」。
もともとは、藍で染めた紺色の麻布に、真っ白な木綿の糸で幾何学模様を刺繍する「刺しもの」の一種ですが、布と糸のカラーリングを変換することで、そのデザインの美しさがさらに際立つ…ということがよくわかります。
藍色の地に白い糸で刺繍するこぎん刺しの常を破って、コンクリート色の地に桜を思わせるピンクの糸で刺繍したり、技術的には難しい「黒×黒」の組み合わせで攻めてみたりと、今までは気付かなかったこぎん刺しの魅力を提案しているのが、弘前市内に店を構えるライフスタイルショップ「green(グリーン)」。
市内で伝統的なこぎん刺し文化の保存を推める「弘前こぎん研究所」と、この店のオーナーとのコラボによる意欲作は、常に“次”を期待させます。
green 青森県弘前市代官町22 1F
0172-32-8199 10:30-19:00 水休
WEBサイトはこちら
あのル・コルビュジエに師事した前川國男の処女作ということで有名でもある建物で活動を続ける「弘前こぎん研究所」では、江戸時代に農民たちが身につけていたこぎん刺しの羽織なども見学可能。
藩政時代、木綿や派手な色で染めた衣類の着用が禁止されていた農民たちは、自ら栽培した麻と藍で作った藍染めの衣類を着ていました。麻布は擦り切れやすく、保温性も良くないため、補強や保温のために刺繍を施したのが「こぎん刺し」の始まり。
途絶えかけていたこぎん刺しを地場産業として復活させたのは横島直道氏(故人)。
古いこぎん刺しを求めて村々の農家を訪ね、600種にもおよぶパターンや基礎資料を収集、後に「弘前こぎん研究所」となるシンクタンクを設立し、技術指導にも注力しました。工房の見学やワークショップも随時受け付けています。
弘前こぎん研究所 青森県弘前市在府町61
0172-32-0595
9:00-12:00 13:00-16:00 土日祝休
※ワークショップは要予約
伝統を見つめつつ、こぎん刺しを「今」っぽく。
大学の卒業論文でテーマにした「こぎん刺し」に魅了され、この世界に入った角舘徳子さん。
2012年には自身の工房「krik's dikdik」を立ち上げて、ワークショップも定期的に開催中。
ベースとして使う布や糸は100%の麻布と木綿糸にこだわり、自身で手染め。
しかも、濃いグレーは月見草で、モスグリーンはセイタカアワダチソウで、という具合に天然の染料で染めています。パステルカラーを中心にした色使い、積極的に普段使いしたくなるくらいキュートです。
krik's dikdikのこぎん刺しワークショップ
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※詳細は角館さんのホームページから、メールにてお問い合わせください