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Story3緻密な手仕事とその担い手を訪ねる

“もったいない”が“美”の原点。南部地方の裂織さきおりがスゴい。

南部裂織

現代に息づく南部地方のものづくり。
それを支えるのは、ものを大切にしてとことん使い切る精神かもしれません。
南部地方の伝統工芸の特徴は、庶民が暮らしの中で編み出して、日々使われながら、今に残されてきたものが多いこと。
今まで捨てられていたものや、古くなったものを材料として使わざるを得ないという意味で「限定から生まれた工芸」でもあります。
「マイナス」からスタートしても、美しく機能的な道具を生み出す南部地方のテマヒマの世界を、ちょっと覗いてみましょうか。

南部裂織

例えばこの「南部裂織」。
本来の南部裂織の材料は着古した着物や古くなった布。
南部地方で「ボット」と呼ばれる古布を細く裂いて織り込み、新たに織物として再生したものが南部裂織です。
材料が一定ではないので、織っている間にも裂織の表情は変化し、本来は仕上がりを想像することはできません。
が、偶然にもタータンチェックのように仕上がった織物にヒントを得て誕生したのがこの商品。
横糸には色と材質が同じ布を使い、縦糸は一定のパターンで色を変えることで、狙い通りの柄を織り上げるというわけです。

昔から生活のそばにいた南部裂織

布が貴重だった江戸時代、農家の女性たちは使い古した布を細くテープ状に裂いて横糸に、麻袋を解いた糸を縦糸にして織り込み、こたつ掛けや敷物、仕事着や小物に至るまで様々な生活必需品へと出世させ、暮らしの中で活用しました。

昔から生活のそばにいた南部裂織 昔から生活のそばにいた南部裂織

南部裂織のつくり方

…言葉だけでは理解しにくいので、南部裂織の織り方を見せていただくことにしましょう。
指南役は八戸ポータルミュージアム(はっち)を拠点に活動している井上澄子さん。
裂織製品の生産や、ワークショップを通して南部地方のものづくりの精神を伝え続けています。

八戸ポータルミュージアム(はっち)を拠点に活動している井上澄子さん

このような、手動の機(はた)を使って裂織が織物へと成長していきます。

手動の機(はた)を使って南部裂織を紡ぐ井上澄子さん

機(はた)を正面から眺めるとこんな感じ。

手動の機(はた)を使って裂織が織物へと成長 手動の機(はた)を使って裂織が織物へと成長

まずは機(はた)に縦糸をセットします。
縦糸の色によって、仕上がりの織物の色合いが概ね決まってしまうので、仕上がりを想像しながら縦糸を1本ずつセットするというわけです。
織る布の幅が広ければ広いほど、多くの縦糸をセットしなければならないため、縦糸のセットに一週間ほどかかることもあるそう…。

機(はた)に縦糸をセット

その次のタスクは、横糸となる古布(ボット)を約1cmの幅に裂くという作業。裂いた布を織り込むので“裂織”なんですねえ。

 裂いた布を玉状に丸める井上澄子さん

裂いた布はこのようにして玉状に丸めておきます。

 裂いた布を玉状に丸める井上澄子さん  裂いた布を玉状に丸める井上澄子さん

縦糸の間に裂いた布を通し…

縦糸の間に裂いた布を通す井上澄子さん 縦糸の間に裂いた布を通す井上澄子さん

機(はた)を動かします。機を一回動かす毎に伸びる布の長さはたったの2〜3mm。そのため、こたつ掛けなら完成までにひと冬を費やしたそう。
横糸に使う古布の模様と縦糸の色との重なり方によって仕上がりの模様が変化する南部裂織。まったく同じ材料を使っても、ふたつとして同じものはできないのです。

縦糸の間に裂いた布を通す井上澄子さん 縦糸の間に裂いた布を通す井上澄子さん

南部裂織は南部人の精神そのもの

材料も自ら捻出し、気が遠くなるような時間を費やしてひとつのモノを生み出すその執念。
いわばリサイクルではあるものの、確実に美しく仕上げるという「美」に対するしつこいまでの追求力。
使われ続けているからこそ今なお残っている文化としての持久力。
雅な雰囲気は持ち併せていないけれど、眺めるだけでも感じる温かみ。
前の使い主がさまざまな使い方をしたボット。
これを裂いて織って、暮らしの中にささやかな美しさを紡ぐわけです
と井上さん。

「使い継ぐ」という感覚や「少しでも美しく」という願いが込められているからこそ、南部裂織が魅力的に見えてくるのかもしれません。

南部裂織のポーチ
 南部裂織のトートバック

ちなみに赤系のチェック柄はGOOD DESIGN賞受賞作。
「kofuトートバッグ」12960円、「kofu ポーチ」4536円

カネイリ ミュージアムショップ 八戸市三日町11-1 八戸ポータルミュージアム(はっち)1F
0178-20-9661 
10時-19時 第2火曜日休
WEBサイトはこちら

南部八戸裂織工房 澄 八戸市三日町11-1 八戸ポータルミュージアム(はっち)4F ものづくりスタジオ
0178-22-8200

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南部八戸裂織工房 澄

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