鯖缶と言えば1個100円くらいで買えるイメージだが、青森には驚きの鯖缶がある。「八戸沖秋さば」である。その価格、なんと1個630円。普通の食堂でなら定食が食べれてしまう価格である。だがしかし、この「八戸沖秋さば」にそれだけの価値がある。美味いのである。
八戸沖は、例年9月から11月頃になると真鯖の旬を迎え、脂分の豊富な最高級の真鯖が大量に水揚げされている。鯖の水揚げの知らせを聞くと、この缶詰メーカーのベテラン買い付け人が市場へ出向き、数多くある漁船の中から、自分の目にかなった漁船の鯖をまるごと買い付け、鯖を工場へと運び込む。工場へ運ばれた鯖は更に選別され、一定の大きさのものだけがこの缶詰の原材料にされる。その数は全体の約2割程度とも言われ、脂分はその他の鯖と比べ明らかに豊富なものばかりである。そして、この選び抜かれた鯖のハラスの部分など本当に美味しい部分だけが缶に詰められていくのである。缶に詰める行程も、最高の部位を崩さないよう一つ一つ手作業で行われている。
このようにして、細心の注意で缶詰にされていくわけだが、この缶詰めはこの後更に半年ほど寝かせられることになる。原材料は鯖と塩だけなのであるが、もともと脂分の多い鯖は缶の中でじわじわと油を生み出し、その油とともにさらに熟成を深める。その結果、この鯖缶は鯖缶の規格をはるかに超えた想定外の深い味わいを生み出していくことになる。
一口食べると全てが分かる。普通の鯖缶のぱさつきなどは全くなく、身はしっとりしていて柔らかく、甘くて味が濃厚。油はそのまま飲んでも美味しいくらい滑らかでコクがある。これ一つで十分におかずになりうる。醤油をたらすだけで最高の酒のつまみにもなったりする。「八戸沖秋さば」は缶詰熟成という調理が行われた立派な料理である。JR八戸駅に隣接する「ユートリー」や青森市アスパムの「青森県地場セレクト」などで売られている。 YOSHIHITO
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