子ども達が目を輝かせ、当たりを引く。
青森県津軽地方の駄菓子には、上方から入るさまざまな駄菓子と共に地元の製菓会社が作る「地駄菓子」がありました。
それらは当物(あてもの)という当たりのついた駄菓子で、より大きなものを当てたい子ども達は、この駄菓子の前で目を輝かせていました。
しかし、小さな駄菓子屋のやさしいおばあさん達が高齢化し廃業していくとともに、片隅に駄菓子を置いてくれた繁盛店もコンビニに変わっていき、駄菓子はどんどん子ども達の近くから姿を消していきます。
津軽の当物駄菓子は、こうした厳しさの中、みんなが集まる時の盛り上げ役として、また、当物ならでは興奮と懐かしさで、今では大人達を惹きつけています。
「大王」(だいおう)
大王は、白あんを食紅などで染め、型で抜いた雲平のような菓子で、弘前にしかない当物駄菓子です。
昭和27年創業の佐藤製菓(弘前市)が既に閉店している他店が始めた大王を作り、今では弘前でも生産はこちらのみになっています。
駄菓子屋では、閻魔大王が書かれた板紙のくじを1回引きます。
くじには「子」「親」「大王」のいずれかが書かれていて、子ども達は一番大きな菓子「大王」を当てたい一心でどのくじを引こうか悩むんです。
城下町弘前ならではの、菊や梅、松をあしらった風情のあるこの大王は、数ある津軽当物駄菓子の中でもルーツ的存在です。
「いも当て」(いもあて)
佐藤製菓の初代 助一さんが昭和40年頃に創り上げた佐藤製菓オリジナルで、いもに見立てた白あんをドーナツ生地でくるんだ当物駄菓子です。
菓子自体はそれ以前から作られていたものでしたが、それを親と子のように大小にし、くじを使って当物にしたことで、津軽を代表する駄菓子となりました。
今では大王よりも人気のある駄菓子です。生地の香ばしさと口の中でとろける餡が絶妙です。
「あん玉」(あんだま)
あん玉は、小さなピンポン玉状の黒あんのお菓子で表面に寒天を塗り光沢をつけた駄菓子です。関東のあんこ玉と似ていますが、きなこをふっていない青森で発展したオリジナルの当物駄菓子です。
あん玉は、中に色の付いたあんこが入っていて、赤だと1等、青だと2等になり、大きなあんこがもう一つ貰えます。大物ねらいの子ども達が競って買っては、割っていたものです。
あんにクセがなく、甘さが上品で、口の中でゆっくりと甘味が訪れるあん玉は、子どもの駄菓子ではあるものの菓子としても上質なものです。
津軽の大人には、懐かしさとワクワク感が同居する津軽当物駄菓子。
仲間が集まったら童心に返って遊ぶのも一興です。 byなおき
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