手仕事の技が生む「日なたの香り」と上質なうま味
「おだし」と言えば、鰹節・昆布とともにいわしの煮干しも代表的なものです。
青森県の津軽海峡と陸奥湾をつなぐ、平舘海峡には、津軽海峡から陸奥湾に入り込む秋のいわしを丁寧に一つ一つ手仕事で、頭を取り、はらわたを除き、串に刺し、炭火であぶり、乾燥させる「焼き干し」が作られています。
世界のスープ類の材料をすべておダシとして見ると、焼き干しは、煮干類の変種として位置づけられると言われています。
煮干類は、脂の乗った魚を煮出すことで、乾物保存のネックとなる脂分を取り除く製法で、大量に捕れる魚を大量に加工できることから広く普及したものです。
しかし、煮干しは煮出すことにより、うまみも逃がしていました。
焼き干しは、煮出すのではなく、炭火でじっくりと焼き上げることで、魚全体に火を通すとともに、脂分を流し出し、さらには独特の香ばしい香り付けをする煮干しに使われる小魚のうまみを究極にまで引き上げる製法です。
さらには、全重量の30%以上もある頭と内臓を一つ一つ丁寧に手仕事で取り除くことで、苦みなどの雑味を取り除き、いわし本来が持つうま味を主役に各種のアミノ酸と芳香を引き出しています。
焼き干しとして使われる小魚としては、九州などの「アゴ(とびうお)」、「小アジ」などもありますが、平舘海峡では「カタクチイワシ」「マイワシ(ヒラゴ)」「ウルメイワシ(ドロボウ)」「小アジ」があります。
この中でも特に遊離アミノ酸量が多いのが、「カタクチイワシ」。
9月、まだ脂が乗りきっていないカタクチイワシがやってきます。この魚で作られた焼き干しが特に格付けが高いようです。
日本食のおダシの主役は鰹節と昆布ですが、鰹節に負けないうまみのバランスと煮干しの3倍と言われるうま味の広がりとこの芳香の優秀性が料理界に認められ、「板長の公表しない隠し味」となっています。
昆布のグルタミン酸に焼き干しイワシのイノシン酸が加わると、うまみが何倍にも広がっていきます。
焼き干しのポテンシャルを確認する手っ取り早い方法は、袋に入ったインスタントラーメン。
麺を茹でる鍋と別鍋で焼き干しをポキポキ折って、水から煮出します。
グラグラ5分ほど煮出す間に、ゆであがった麺を丼へ、そして焼き干しのおだしの火を止め、粉末スープを入れ、丼へ。
芳醇な焼き干しの香りと上品な魚だしが加わって、絶品インスタントラーメンができあがります。
2本で十分。 お試しを。 byなおき
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