邪気を払い健康と五穀豊穣を願う七草粥。
全国的には、セリ、ナズナ、ゴギョウ(ハハコグサ)、ホトケノザ(タビラコ)、スズナ(かぶ)、スズシロ(だいこん)の七種ですが、冬場に葉物などとれない津軽藩では、この地方ならではの七草が用いられていたと「津軽藩日記」に記されています。なんと、津軽の七草には、あの大鰐のモヤシも含まれていたのですよ。
津軽の七草にも数えられる「セリ」。セリは国内で最も古くから利用されてきた数少ない日本原産野菜のひとつです。小川のほとりや田んぼの畔に群生し、競って伸びる様子から「セリ」の名が付いたとか。古来は山菜でしたが、現在流通しているのは「田ゼリ」とか「畑ゼリ」と呼ばれる栽培ものです。
『清水っこ(しみずっこ)』と呼ばれる清らかな湧き水が豊富な岩木町の一町田(いっちょうだ)地区は、昔からセリ産地として有名です。この『清水っこ』は外気温にかかわらず一定の水温を保つため、この地域の田んぼは真冬でも凍ることがなく、藩政時代の昔からセリ栽培が行われていたのだと言います。
津軽藩主に献上された七草は主に大鰐産だったようですが、藩士の家庭で手に入れられる七草は必ずしも城内と同じではなく、ましてや庶民は1種か2種を入れるのが精一杯でした。おそらく、一町田のセリは、藩士や商家にとっては比較的手に入れやすい七草のひとつであり、庶民にとっては冬場の貴重な菜っ葉だったとことでしょう。
一町田のセリは、独特の強い香りとシャキシャキとした食感が身上です。鍋物のほかおひたしやみそ汁、漬け物などで食べますが、本領を発揮するのは実は「鍋焼きうどん」です。
一町田のセリはなかなか手に入りません。県内のスーパーでも売り場に並ぶのは大産地宮城県産がほとんどです。もし「青森産」とあったら、きっとそれは一町田のセリでしょう。by 義人
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。