青森県には不思議な食べ物が今でも残っています。
とても苦い「トコロ」がそのひとつです。
トコロとは、ヤマノイモ科ヤマノイモ属の蔓性多年草。茎は蔓になって伸び、葉は自然薯などヤマイモと間違えやすいハート型、食用とする根茎(いもの部分)は不規則に分かれ、ひげ根をたくさん出します。とても苦くてそのままでは食べられません。灰汁で煮て流水にさらし、やっと食べられるようになる。それでも食べたい不思議なイモです。
青森県南部地方のあちこちの家では、山からとってきたこのイモを、朝暗いうちから煮たものだそうです。小さなイモですが、なかなか煮えがたく、煮えるまで4時間も5時間もかかります。イモを煮るとどことなく甘酸っぱい香りが漂い、その香りに誘われるように、その日だけは子供達も早起きをするのだとか。イモはとても苦いのに、煮ると甘い香りがするから不思議です。
この地方では、灰汁を入れてゆっくりと煮込み、冷ましたトコロをそのまま食べます。好きな人には、あの苦さとまとわりつくような歯触りがたまらないのだそうです。不快さがおいしいとは、何とも不思議な食べ物です。
トコロの不思議をもうひとつ。この苦味、男性にはとても不快です。子供はもちろん無理でしょう。しかし、女性は初めて食べても不快感はないらしく、むしろ美味しささえ感じるというのです。職場でも試しましたが、ほとんどの男性が口から出してしまったのに、女性たちは平気で、いきなり数個食べてしまう人も・・・。女性だけが耐えられる苦味なのでしょうか。
ほとんど見かけることがなくなったトコロは、南部町(旧名川町)の直売所「チェリーセンター」で、たまーにですが、今でも手に入れることができます。 by 義人
トコロの健康効果はこちら
トコロの成分で注目されるのはサポニンです。渋み、苦味、えぐみの原因ともなる成分ですが、水と油の両方に溶ける性質を持ち、血管についたコレステロールを除去したり、血中脂質を低減させる働きがあることが明らかになっており、血栓をつくるもととなる過酸化脂質の生成を抑えることも分かってるそうです。また、非常に豊富な食物繊維はお通じを改善し、腸内の有害物質の排出を促してくれます。
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