挽きたて、打ちたて、茹でたての三たてがおいしいと言われる蕎麦ですが、津軽にはそうでない蕎麦があります。江戸時代に生まれたと伝わる「津軽そば」です。
この「津軽そば」が他と異なるのは、つなぎに大豆をすりつぶした呉汁を使うこと。藩政時代、収穫の少ない米は大事な年貢米でした。このため、庶民は普段からそばを食べる機会が多かったと言いますが、そばだけでは栄養がかたよってしまうので、タンパク質が豊富な大豆を使う独特の製法が生まれたのだと言います。
「津軽そば」は完成までとても手間がかかります。一昼夜水に浸しておいた大豆を丹念にすりつぶし、その呉汁をそばがきに混ぜ合わせて生地をつくります。その生地を半日ほどねかせ、熟成させてから、そばを打つのです。
食生活が豊かになったことから、手間ひまがかかる「津軽そば」は、戦後、一度消え去ったようです。しかし、平成9年、弘前城公園西壕にのぞむ老舗の日本料理店『野の庵(ののあん)』の佐藤夫妻を中心に「幻の津軽そば研究会」が結成され、文献や旧家に伝わる製法を調査、実証しながら、とうとう昔ながらの「津軽そば」が復活しました。
その味はというと、やわらかくてコシがあり、もちもちしていて、そばの風味とともに、大豆のほのかな甘味を含んでいます。昔は、熱くしたそばをどんぶりに盛り、魚だしのかけ汁をたっぷり入れ、一寸くらいに切った油揚げや、こまぎれのネギをのせて食べたのだと言います。(↑写真は津軽そばの鴨南蛮です。)
弘前に復活した「幻の津軽そば」。元は武家屋敷という『野の庵』で、雪に覆われた弘前城公園を望みながら、ゆっくりと味わってみてはいかがですか。 by 義人
『野の庵』でおもしろいものを見つけました。
桜の花びらが薫るおいしい手作りのお塩です。
慎ましやかな桜色とやさしい香り。
食事を楽しくしてくれそうな、そんな一品です。
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