青森で生まれたきのこをご存じでしょうか。真っ白いなめこ「初雪たけ」です。
「初雪たけ」は県の林業試験場が長い期間をかけて育成した青森県オリジナル品種。最大の特徴は、その名のとおり「雪のように白いこととなめこ特有のヌメリが少ないこと。歯ざわりが良く、クセのない淡泊な味で、新鮮なものはマツタケのような香りが楽しめます。煮ても焼いてもくずれないため、用途範囲が広く、和食はもちろんのこと中華や洋食にもよく合うと近頃人気です。
「初雪たけ」の開発は、1975年、県内の生産者が偶然見つけた「シロナメコ」を青森県林業試験場(当時)に持ち込んだことから始まります。ナメコといえば褐色でヌメヌメした食感が売りもの。一度は珍しい「白ナメコ」として販売されましたが、ナメコの増産が盛んだった当時は空前のナメコブームであり、ナメコのイメージがようやく定着してきた頃でもあったため、逆に気味悪がられ、見向きもされなかったと言います。
また、普通のナメコに比べて栽培期間が長いこと、突然変異株であるがゆえ環境変化に敏感すぎること、乾燥に弱いことなど欠点が多かったため、栽培面から見ても厄介なきのこだったのです。
しかし、林業試験場の研究者たちはあきらめませんでした。市場から見捨てられたかに思われた「シロナメコ」でしたが、その可能性を信じ、継代培養と選抜育種を引き継ぎ、白さや形質の維持と改良に努めていたのです。
やがて平成に変わった1990年代、新しいきのこを食べたいと思う人と価値ある新しいきのこをつくりたいと思う農家が増えたことや、単なる珍しいきのことしてではなく、優れた食材として正しく評価しようとする仲間が増えたことなどから、長い間沈黙を守っていた白いナメコがひとつの品種として認められ、注目されるようになりました。
そして1997年3月に新品種として出願登録され、翌1998年11月に晴れて「初雪たけ」と名付けられ、徐々に生産量を増やしながら今日に至っています。
多くは語られていませんが、研究者達の意地と努力が実らせた「初雪たけ」の復活物語です。by 義人
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