私は弘前生まれです。
小学校に入ると同時に青森に引っ越したので、
記憶に多く残っているのは青森ですが、
どうしても弘前に懐かしさを感じてしまいます。
そんな弘前で最近、心にぐっときたのが”しまや”です。
“しまや”は元大工町に古くからある居酒屋で、
津軽の家庭料理を思いっきり堪能できます。
店に入るとカウンターの上にトレイが並び手作りの料理が盛られています。
どの料理も懐かしさを感じるとともに、
食べたい!という気持ちにさせるものばかりです。
郷土料理と一口に言っても、
大抵は子どもの頃の記憶の中にあるものとはイメージが違うもの。
例えば貝焼き味噌。
子どもの頃は原材料名をそのままに「たまごみそ」などと呼んでいましたが、
名前が示すとおり貝柱などは存在するはずもありませんでした。
“しまや”の女将さんは、
「そうだったでしょ。具は何も入っていなかったの。
だからこの店の貝焼き味噌も何も入れてないのよ」と話します。
こんな考え方で作られた料理はどれも昔のままの味付けですが、
一つひとつ手間はしっかりかけられているので最高の味です。
この店の名物は「身欠きニシンの甘辛煮」。
身欠きニシンをゆっくり煮込んだこの煮付け。
一口するごとに身欠きニシンの風味とコクが口の中に広がります。
他にも、大鰐温泉もやしの油炒め、つぶと凍み豆腐の煮付けなどが、
昔ながらの味付けそのままに出てきます。
また、”しまや”の女将さん曰く、
この店の料理は津軽の地酒じゃないと合わないそうです。
津軽の濃い目の味付けには、
端麗ではなくしっかりとした「旨口」のお酒が合います。
このお店のお酒は豊盃の三浦酒造のもの。
たっぷりのお湯で湯せんし、日だまり感くらいでいただけば、
酒の旨味が最高にきわだちます。
40年間この地で居酒屋をしているこのお店。
オヤジ達の姿を通して、この街の移り変わりを見てきました。
そして、数え切れないほどオヤジ達を癒してきた風格のようなものがありました。
津軽のおかず一杯、最高に楽しかったです。
by YOSHIHITO
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