先日、岩木山の麓に住む
あけび蔓や山ぶどうの蔓の細工職人
田中昭三さんとお会いする機会がありました。
田中さんは今年で76歳になるこの道一筋の職人。
父親の跡を継ぐ形でこの仕事を始めたそうです。
昔の職人の世界ですから教えてくれる人などおらず、
色んな人の技術を盗むように習得していったと言います。
あけび蔓も山まぶどうの蔓も、
山から採ってきた蔓はそのままでは使うことはできません。
天然素材ですから色も形もさまざま。
このままでは美しく仕上がることはないので、
2~3年かけて陰干しした蔓の中から、
完成品のイメージに合う色合いや触感のものを選び、
一本一本節を取って形状を整えることでようやく編むことができます。
編み方は基本的なものだけでも30種類以上ありますが、
田中さんの仕事はとても丁寧で、
1本1本力を込めしっかり編み込んでいきます。
このため一時間で約2cm程度、
横列にして2列を編むのが精一杯です。
しかし、それだけに見た目で分かるほど田中さんの作ったものは
一つひとつの目が整然としていて、美しい仕上がりです。
最高の技術を持つ田中さんですが、
一つのものを作っていると、
何百とある編み目の中には、納得のいかない箇所が必ずあり、
完璧なものを作ったことは一度もないと言います。
満足できるものを作ることができたとすれば、
それは死ぬ時だろうなと田中さんは笑顔で話してくれました。
田中さんの作品は決して安くはありませんが、
そこにかけられている手間にその価値は十分あります。
見た目にも美しく、自分だけのただ一つオリジナルで、
50年、100年と使うことができて、
使い込むほどにその風合いが良くなっていく。
もう少しこれが似合う人間になったら欲しい一品です。
興味がおありの方は、
弘前市の「みかみ工芸」をのぞいてみてください。
by YOSHIHITO
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