八戸地方には6月下旬から8月のお盆にかけて出回るシベリア系の在来きゅうりがあります。「地きゅうり」「昔きゅうり」などとも呼ばれる「糠塚(ぬかづか)きゅうり」です。
来歴は明らかでありませんが、藩政時代に持ち込んだ種子を八戸市糠塚地区に植えたのが始まりとされ、代々自家採種を繰り返しながら周辺地域に広がっていったと考えられています。
この地方でキュウリと言えばこの「糠塚きゅうり」を指すのが当たり前。それくらい広く栽培され、出回ってきましたが、いつしか深緑でスマートな経済品種に押され、市場からほとんど姿を消してしまいました。理由は大きくふたつ。自家採取し自根で栽培される糠塚きゅうりは病気に弱く生産量も少ないこと。そして見た目がおいしそうじゃないことです。
シベリア系きゅうりは太く短いのが特徴。「糠塚きゅうり」もずんぐりとした短太で、イボは黒く、堅い果皮は半白に近い黄緑色、成熟してくると褐色になり、果面にメロンのようなネットが現れます。たしかに、この外観からはその驚くべきおいしさが想像できないのでしょう。
「糠塚きゅうり」とよく似た外観では、同じシベリア系の「加賀太きゅうり」が有名ですが、加賀太きゅうりは煮たり炒めたりする加熱調理に適しているのに対し、「糠塚きゅうり」は生で食べるのが一番と地元の人は口をそろえます。
歯切れの良い食感とみずみずしさがたまらない「糠塚きゅうり」は、よーく冷やしたものを割って種をとり、好きな味噌をつけるだけです。一度普通のきゅうりと食べ比べてみてください。後戻りできなくなるかもしれませんよ。 by 義人
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