英語で「japan」と表現される漆は、
日本特有の工芸・塗り物に欠かすことのできない原料ですが、
この漆文化に不可欠の技が唯一青森に残されています。
漆のメッカ・岩手県浄法寺町とも隣接している田子町の中心部、
ガーリックセンターからほど遠くないところに、
鍛冶職人中畑文利さんの住居兼作業場があります。
中は決してきれいとは言えないませんが、
とても雰囲気のある作業場です。
ここで中畑さん作り上げているのは漆掻き用具。
漆掻き用具の鍛冶製品を作る技術は、
現在、中畑さんにしか受け継がれていないのです。
中畑さんは今年で63歳。
田子町に生まれ育ち、中学卒業後から現在まで45年以上、
農鍛冶一筋で暮らしています。
そしてその技術は日本文化を支えるものとして、
文部科学省の保存技術保持者にも選ばれています。
以前、中畑さんとお話をしたとき、中畑さんはこんなことを言ってました。
「今の子どもはあらかじめ造られた部品を組み上げるのに慣れていて、
想像力が乏しくなっている。ゼロから造り出すのに慣れていない。
自分でものを想像し作ると、それが例え不格好なものであっても、
自分の発想が現実に形になったとき、そこに喜びが生まれるものなんだ。」
とても考えさせられる言葉でした。
国産の漆を使った工芸品を見つけたら、
それには間違いなく根っこの部分で
中畑さんの作った道具が関わっているということは、
青森県に住む私にとって、ちょっとした誇りでもあります。
by YOSHIHITO
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。