「豆しとぎ」という食べ物をご存じでしょうか?
「しとぎ」とは、米をつぶし、粉にして作ったもちのこと。
もちの原型ともいわれ、古くから神前のお供えものとして欠かせない存在でした。
かつては全国的に食べられていたようですが、この伝統食が今なお生き続けているのは、青森を中心とする北東北と九州地方のごく一部だけだとか。日本の北と南の端だけに残っているのはなんとも不思議ですね。
これに大豆を混ぜたのが”豆しとぎ”です。
同じ青森県内でも、米どころの津軽地方で「しとぎ」といえば米粉をしとねたこの餅のこと。甘~い”あんこ”も入っています。
しかし、南部地方で”しとぎ”といえば、普通はこの「豆しとぎ」を指します。しかも”あんこ”なし。大豆を加えてつくる「豆しとぎ」は、しばしば冷害に見舞われ、米が津軽地方以上に貴重であった南部地方ならではの伝統的なおやつと言えます。
作り方はいたってシンプル。水に浸しておいた大豆を硬めに茹で、すり鉢ですりつぶし、米粉を加えてよくこね合わせるだけ。青大豆の煮汁は甘味が強いので、それを加えるだけで甘味が出ますし、お好みで砂糖を加えても良いでしょう。
使う大豆の種類によってできあがりの色合いは様々。黒大豆や黄大豆も使いますが、美しいうぐいす色に仕上がる青大豆を用いるのが最もポピュラーで、私の記憶では一番美味しかったような気がします。
そのまま食べてもおいしいのですが、焼いて食べると香ばしく、甘味が引き立って美味しさもアップ。昔の時代、南部の子供たちにとって、どれほど楽しみなおやつだったことでしょうか。
つい先日、なんと東京都内のある居酒屋で、焦げ目が付く程度に焼いた「豆しとぎ」をいただきました。これが不思議なほどアルコールにピッタリ。子供のおやつだと思っていましたが、なんのなんの。大人の絶品おつまみでもありました。侮れませんよ!by 義人
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