今日のお昼のテレビニュースで、りんご「ふじ」の収穫が始まったと報じられていました。今回は、おいしいりんご作りに欠かせない道具「剪定鋏」の紹介です。

西洋りんご(現在のりんご)が青森に導入されたのは明治八年(一八七五)。今から約百三十年前のことです。その当時のりんご栽培は諸外国の見よう見まね。今では世界一と言われる「整枝・剪定」技術も、もとは海外から輸入された技術を長年にわたって改良したものです。
「整枝・剪定」とは、木の中まで日光が入るようにし、毎年よいりんごが実るよう木の形を整える作業のこと。おいしいりんごをつくる上で最も重要とされており、この作業に無くてはならない道具こそが「剪定鋏」なのです。
りんご用の剪定鋏が地元でつくられるようになったのは、実はりんご導入からしばらく経った明治時代の半ばすぎ。それまでは、庭師の用具や林業用の鋸、鎌などを使っていたのだとか。津軽型と呼ばれるりんご剪定鋏は弘前市薬師堂の三國定吉氏が生み出したと記録されています。(※資料:県立郷土館)。
りんご剪定鋏の誕生によって剪定作業の能率は格段に向上しますが、りんご栽培が高度化するにつれ、いろいろと改良が加えられ、現在のような形に進化してきました。日本一のりんご産地を支えている津軽の剪定鋏は、全国の果樹鋏の手本となっているのだそうですよ。(↓古い順に左から。この微妙な進化わかります?)

■刃
切り刃となる包丁(大きい方の刃)は、当初はウデからまっすぐに伸ばしていましたが、剪定技術が向上し、より低い位置に枝を伸ばすようになったため、手首に負担がかからないよう刃自体を下に曲げたものが作られるようになりました。
■チカ
挟めばカチッと音がするストッパーの部分。チカはもともと棒状の鉄でしたが、規模が拡大し切る枝の数が増すと、その衝撃が手に負担となるようになり、衝撃の少ないコイルバネを用いるようになりました。
■ウデ
ウデの握りやすさは使い心地を左右します。ウデは、右利きの人でも左利きの人でも手に馴染むようよう、ねじられ、まるめられるようになりました。これで作業能率がグンと上がったと言います。
■アサリ
一番大事な「アサリ」。包丁とカラスのすき間のことで、この合わせ方によって切れ味も長持ち度も断然違うといいます。津軽型りんご剪定鋏の切れ味の秘密は、水焼き(焼き入れ)で頑丈に仕上げられることと、このアサリに微妙な角度をつけていること。
型抜きで、平らにピタリと合わせられた工業製品は、刃がすり減るほどにすき間が開き、切れ味を失っていきますが、津軽型は、角度があることによってすき間が開くことはなく、刃先はいつでもピタリと閉じられるため、切れ味が落ちることはないのだそうです。
道具って進化していくんですね!すごいぞ!!
by 義人
※南部地方にも昔ながらの方法で剪定鋏を作り続ける名人がいます。
りんご剪定鋏の部位と役割

①包丁:片刃のりんご剪定鋏で唯一の切り刃。
②カラス:頑丈な包丁を受ける大事な部分。絶妙なカーブで枝をつかむ。
③止めねじ:津軽型は座ガネのない左ねじ。使ってもゆるまない。
④アゴ:切る度に重なりあうアゴはシンプルな形でありながら実に巧妙。
⑤カダ(肩):鋏の強度を高め指の負担を軽減する。
⑥虫バネ:切れ味をソフトにし、逆に刃の返りをよくする。
⑦チカ:刃の閉じすぎ(はみ出し)を防ぐストッパー。
⑧ウデ:持ち手の部分。
⑨カワ:いわば安全装置。使わないときは対のウデにまわしておく。
いやー、マニアックだナー!(笑)
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