”りんごがおいしい季節”です。
でも、もう来年のりんご作りが始まっているんですよ。
先人達が築き上げた高度な栽培技術に支えられている「青森りんご」。
その中で最も重要とされる技術が整枝・剪定(せいし・せんてい)です。
この作業は、木の中まで日光が入るようにし、毎年よいりんごが実るように木の形を整える大事な作業で、「千本の木を剪定しなければ一人前にはなれない。」と言われるほど難しいのだそうです。このため、剪定技術を会得したりんご農家はとても尊敬され、「枝切りの師匠」となって他の農家を指導します。
そんな師匠たちが大切にしている道具が「りんご剪定鋏」と「りんご剪定鋸」。
技術に優れた師匠たちは、優れた道具にこだわり、大切にします。
剪定鋸は、その形と役割の違いから、「腰鋸(こしのこ)」と「折込鋸(おりこみのこ)」の2つに分けられます。
「腰鋸」は、その名が示すとおり、普段は腰元に携えた鞘に収めておき、比較的近い枝を切り落とす鋸。一方「折込鋸」は、刃を鞘の部分に折り込んで収納する鋸。刃をひとたび開けばその長さはなんと3尺、離れた枝を切り落とすときに使います。
剪定鋸は刃の形によってさらに2つに分けられます。
ひとつは根元から刃先まで細かく目を立てる「バラ目鋸(ばらめのこ)」、
もうひとつは刃渡り中央部の目を落とし窓のようにえぐった「窓鋸(まどのこ)」です。
「バラ目鋸」は、細い枝を切り落とすときに使います。細かく配置された目がどんどん木を削るため、大抵の枝は一太刀で簡単に切り落とします。
「窓鋸」は太枝を切るときに使います。腕の太さほどもある太枝を一太刀で落とすのは至難の業。何度も斬り返すことになりますが、「バラ目鋸」ではオガ屑が目に詰まりやすく、すぐ役に立たなくなってしまいます。「窓鋸」なら、窓の部分からオガ屑が掃き出されるため、目が詰まりにくく、太い枝も一気に切り落とすことができるのです。
さらに、「枝切りの師匠」と呼ばれる名人達は、柄の部分にもこだわります。
まず材質。材質はやわらかくて水回りに強いホオノキが一般的ですが、師匠達は、自分だけの名刀を作り上げるがごとく、カシやケヤキ、コクタンなどの銘木を選びます。
次に形状。手の大きさ、厚さ、指の太さは千差万別。抜きやすく握りやすいよう自分の手に合わせて作ったり直したりします。
そして装飾。「折込鋸」の柄に装飾を施す師匠も少なくありません。仕事に誇りを持ち、道具を大事にしている証です。彫り物の内容も人それぞれですが、一番多いのはやはり竜虎。仕事に向かう男の意気込みです。
りんごづくりに真剣に取り組む生産者達のこんなこだわり。すごいと思います。
by 義人
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