今や懐かしい食べ物となってしまった「寒干し大根」。
昔は、どこの家でも軒先に自家製の「寒干し大根」をつるし、冬場の貴重な食料としていました。食料の乏しかった時代、大寒の頃になると、土の中に眠らせておいた秋じまいの大根を取り出し、家族全員が協力しながら、一冬分の「寒干し大根」づくりに励んだものなのだそうです。
雪に閉ざされる暮らしと冬ごもりのための食糧確保。今では想像もできない生活ですね。
大根の皮をむいて適当な大きさにそろえ、大釜で茹でてからワラを通し、冷たい清水にさらしてから、寒風に当てて乾かすと「寒干し大根」のできあがりです。作り方はシンプル。簡単といえば簡単ですが、秋大根を眠らせておく期間が3ヶ月、清水にさらすこと10日間、さらに寒風で乾かすこと2ヶ月半。なんと半年近い月日と手間をかけて仕上げるのです!
昔と変わらない寒干し大根の持ち味は、日なたくさい特有の甘味と、どんな味でも引き立たせるあの食感でしょう。出汁や具のうま味がたっぷりと染みこむので、一口噛むごとに混淆したうま味がにじみ出し、料理の味を一層引き立たせてくれます。
寒干し大根といって真っ先に思い浮かぶのは味噌汁です。身欠きニシンの煮付けや馬肉汁にもよく合いますが、味噌の味をたっぷりと吸い込んだ寒干し大根は、朝の味噌汁を何倍も何倍もおいしくしてくれたものでした。
とっても素朴なこの「寒干し大根」は、実は、とっても贅沢な食材だったんだと今頃気づきました。by 義人
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