小さい頃食べていたモノ。
たとえそれが好物だったとしても、その場所を離れ、時が流れてしまえば、いつしか口にする機会がなくなり、存在そのものが記憶の奥底にしまい込まれたりします。
私にとってそんな食べ物のひとつが「三戸せんべい」。
先日ある方からいただきました。
「三戸せんべい」は見た目どおりの「南部せんべい」です。
「南部せんべい」とは、小麦粉を水で練って円形の型に入れ、型ごと高温で焼き上げる昔ながらの焼き菓子。
そもそもの発祥地は八戸という説が有力で、別名「八戸せんべい」と呼ばれたりします。
知らない方は同じものだと思うでしょうが、「三戸せんべい」と「八戸せんべい」は明らかに食感が違います。
「八戸せんべい」がバリバリ、ボリボリというのに対し、「三戸せんべい」はサクサク、ショリショリ。
歯ごたえはあるものの実に軽い食感なのです。
その理由は、小麦粉の調合や練り方、膨らまし粉の割合、焼き型の形状と素材などなど。
三戸せんべいはその昔「流しせんべい」とも呼ばれたそうで、ゆるく練ったタネを型の中に流し込んで焼いたのがその名の由来とか。
この違いは食べてみなければわかりません。
代表的な三戸せんべいは「うすごま」と「白せんべい」。
そのまま食べてももちろんおいしいのですが、私が小さい頃は、よく「うすごま」にマーガリンを塗って食べたものでした。
久しぶりに「三戸せんべい」を目の前にした私は、無性にマーガリンを塗ってみたくなり、昔を思い出してやってみたのがこちら。
うまい!やっぱりうまいっ!うまいすぎるっ!(笑)
想像できますか?このおいしさ。この軽さ。
控えめな味の三戸せんべいはマーガリンと相性バッチリなんですよ。
育ち盛りだった私は、止めよう止めようと思いつつ、いつも20枚以上入っているせんべいの大半を食べてしまったものでした。
三戸町内には今でも6軒の煎餅店があります。
南部地方へおでかけの際には、
あの「南部せんべい」と違う「もうひとつの南部せんべい」を試してみてはいかがでしょうか。
※「馬淵川沿いと五戸川沿いの三戸郡は軽い三戸せんべいタイプが主流。八戸市と上北郡は堅い八戸せんべいタイプが主流で、その境界は五戸町あたり。」というのが私の仮説です(笑)。
by 義人
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