あるお寿司屋さん曰く、
殿様が住んでいた街・弘前は寿司だって美味しいのだそうですが、
内陸にあるにも関わらず魅力的なお寿司屋さんが多いのは事実で、
土手町からおよそ2㌔ほど南の取上2丁目にある、
寿し処「えび新」もその一つです。
「えび新」は昭和50年創業のお店。
名前の由来を聞いてみると意外なほどに何もなく、
他では見かけない名前という一点のみで付けた名前なんだそうです。
ところが、お客さんは「エビに自信があるのだろう」と期待してやってくるため、
エビを切らすことができなくなってしまい、昔はけっこう大変だったそうです。
御主人の小野さんは、店に入って一言話しただけで、
その人柄が伝わってくるような暖かさをもった方で、
そんな御主人の握る寿司は、気構えて食べるのではなく、
普段着で食べてこそ美味しい寿司という感じがします。
このお店の名物が山海巻き(1,575円)。
しめ鯖、山ごぼう、しそとガリを具材に作られる中太巻きで、
小野さんオリジナルの一品です。
握りでは使えないしめ鯖の端の部分を巻物にしたところ、
これがけっこう美味しいものだったので、
食感にアクセントをつけるために山ごぼうを、
味のバリエーションでガリを入れ、
これにしその風味を加えることで、
すっきりと食べやすいものにしたのだそうです。
しめ鯖の甘さとガリの甘さのコントラストが絶妙で癖になる味です。
名付け親は弘前大学のウェスターホーベン教授。
店の常連客だった彼に、完成した山海巻きを試食してもらい、
その時に名前を考えてもらったそうです。
海苔一枚半を使った生太巻きもこの店の自慢の一品。
カンパチにマグロ、タイ、サーモン、磯っこ、ほたて、うに、カニの剥き身など、
新鮮な八種類の具材を使ったもので、
山海巻きのすっきりした味と対をなすような濃厚な味には大満足です。
海苔の境目のところから食べ始めると、
中の具材がこぼれにくく食べやすいんんだと教えてくれました。
「えび新」は握りのシャリがかなり大きいのも特徴の一つ。
これはもともと大学生のお客さんも多かったので、
お腹いっぱいになってもらいたくてそうしているのだそうです。
今も昔もお寿司は高級品。
一人前でお腹が満たされないのでは可哀想だとシャリが大きくなりました。
これはこれで立派なコンセプトだと思います。
お腹いっぱいになるつもりで行くことをお薦めします。
by YOSHIHITO
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