三戸町は南部氏中興の祖といわれる第26代当主・
南部信直の頃には居城が置かれていた城下町。
昔からの商店街が今もなお健在で、昭和の雰囲気が漂っています。
その商店街のはずれ、車で走ると見逃してしまいそうな小さなお店「きんか堂」。
南部地方の郷土料理”きんか餅”を専門に扱っているお店です。
“きんか餅”は南部地方の郷土料理の一つで、
黒砂糖やみそ、黒ゴマ、木の実などを混ぜた「あん」を、
小麦を練った「もち」でくるむ素朴なお菓子です。
黒砂糖が高価だったので「金貨」、贅をこらしているので「金華」、
名前の由来には諸説あって本当のところは定かではありませんが、
南部地方の豊かな粉食文化が生み出した伝統の味です。
三戸町では昔から、8月16日の送り盆に”きんか餅を”お供えしていたそうで、
どの家庭でも作っていたもののようです。
きんか堂の店主・”きんか餅”の達人・相内トミエおばあちゃんは、
今年で83歳になりますがとても元気で楽しい方。
終戦の動乱の中を生き抜いたトミエおばあちゃんの信条は、
「くよくよしたってしょうがない。腹を抱えて笑っているのが一番」ということ。
だからいつも前向きで、このきんか堂を始めたのも75歳の頃と言いますから、
その姿勢には驚くしかありません。
“きんか餅”は、地域の郷土料理として家々に作り方がありますが、
トミエおばあちゃんが作ったものは絶品。
完全な手作りによって作られるため、一日100個、
かなりがんばっても200個作るのが精一杯ですが、
平日は日常のおやつとして、
土日ともなると遠方からもお客さんがやってきて、
作ったものは全て売り尽くすほどの人気だと言います。
さらに、お盆ともなると、”きんか餅”を各家庭では作らなくなったせいか、
一日で1,500個も売れるそうです。
実はこれだけの人気があるのには秘密があります。
トミエおばあちゃんの”きんか餅”は小麦を練るときに一工夫があり、
そのため、時間が経っても固くならないでプルプルしています。
だからこれほど人気があるわけです。
ただし、この一工夫は企業秘密。
「小さい店だけど企業秘密はあるんだよw」と茶目っ気たっぷりに話します。
こうして作られる”きんか餅”は、
一口かぶりつくと中から餡がとろっと溶け出てきて、
黒砂糖の甘さ、ゴマの香ばしさ、クルミの風味と食感が何とも言えない素朴さを生みだし、
日本人であれば誰しもが懐かしいと感じてしまう美味しさのお菓子です。
by YOSHIHITO
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