実りの秋。
稲刈りが進んだ津軽地方の田んぼでは、
穀類の中で唯一薬用になるという「ハトムギ」の収穫も終わりました。
(↑この写真は収穫にはまだ早い時期に撮影しました。)
ハトムギは、
東南アジア原産、イネ科ジュズダマ属の1年生草本植物です。
名前の由来には、
「鳩が好んで食べる」という説や、
「収穫量が多く八斗(はっと)も穫れる」という説があり、
日本伝来には、
加藤清正が朝鮮半島から持ち帰ったという説や、
奈良時代に中国の高僧鑑真和上が伝えたという説などがあります。
ハトムギは、日本伝来以降日本全国に広がり、それぞれの地域に適した生態型をもつ系統ができあがっていきました。
食用より薬用に用いられることが多かったようですが、
米と違って主食とはならないため、
品種として整理されたり改良されたりすることもなく、単なる在来種として存在するだけでした。
青森県にも、小規模ながら、古くから薬草として栽培してきた地域があります。
それが中泊町の福浦地区(旧中里町)。
この地で昔から栽培されてきた在来ハトムギこそが「中里在来」なのです。
昭和50年代、ハトムギは健康ブームにのって需要が増え、
水田の転作作物としても注目されるようになります。
この頃から、全国各地で集団栽培が始まり、
全国の在来種を基に品種改良も行われるようになりました。
青森の「中里在来」は、
品質良好で収量が安定しているため、
栽培地域は東北各地に広がっていたようですが、
やがて新しい品種ができあがると、
「中里在来」のような古い品種は全国から次第に姿を消し、
話題の育成品種へと切り替えられていったのでした。
しかし、「中里在来」発祥の地、旧中里町福浦地区の福浦営農組合では、
今もなお、昔ながらの「中里在来」を作り続けています。
代表の塚本さんによると、
一時は新品種への転換を試みたそうですが、
加工してみると「中里在来」の風味に勝るものではなく、
結局、地域古来の「中里在来」に立ち返ったのだといいます。
地域で生まれた作物には、
やはり、そこでなければならなかった理由があるのでしょうね。
風味の良い中里在来の商品は、ハトムギ茶、ヨクイニン(精白したハトムギ)、ハトムギ粉、ハトムギかりんとうなど。
青森に根ざした在来種の風味を楽しむもよし。薬効を期待するもよし?(笑)
今年は、ここ5年間で最高の出来映えとのことですから、
機会があれば是非試してみてください。
収穫の秋は、どうしても農産物の話題になりがちです(笑)。
by 義人
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