先日、お客様と一緒に南部地方に行ってきました。
うれしいことに、その数日間は晴ればかり!
さわやかな秋晴れの中、
あちらこちらでは南部伝来の食用ギク「阿房宮」の収穫が行われていました。
花を食べる?花は見るもんだろ!
そう言う友人が私の回りにもいますが、
日本人は昔から桜や菊の花を食用とする習慣があり、
特にキクの食用は江戸時代にはかなり大衆化していたようです。
現在、食用として栽培されている菊は約60種。
青森県の南部地方では、
南部藩主が京都の九条家からもらい受けたとか、
八戸の豪商が大阪から取り寄せたという説が残る「阿房宮」が大半です。
「阿房宮」という風流な名前は、いったい誰がつけたのでしょうか?
この「阿房宮」は、苦みがなく、芳香と甘味が抜群で、歯ごたえもよい食用ギクの王様。
花には苦い芯がないので、花をまるごと食べることもできます。
そしてすごいと思うのは、
二百年(以上?)にわたってそのおいしさが保たれ、そして守られてきたこと。
他の地域で栽培すると、2~3年もすれば苦味が出てきてしまうといいますから不思議ですね。「阿房宮」は自分にあった故郷をちゃんと憶えているのかもしれません。
「阿房宮」は、初霜が降りる直前の10月下旬~11月にかけて収穫されます。
鮮やかな黄色が美しいこの花は、
霜に当たると花が赤茶色に変色してしまいます。
農業資材が発達している今でこそ霜対策は万全ですが、
昔の作り手たちは、毎日気が気ではなかったことでしょう。
そこで、1971(昭和46)年に八戸市の園芸指導農場(現八戸市農業交流研修センター)が苦労して育成したのが、阿房宮より早く収穫できる「八戸ぎく一号」「八戸ぎく二号」「十五夜」という品種です。
↑早く収穫できる順(時計回り)に「十五夜」「八戸ぎく2号」「八戸ぎく1号」「阿房宮」
<お詫び>
同じ十五夜の写真を誤って阿房宮として掲載してしまいました。近日中に訂正いたします。大変失礼いたしました。
あべこべだった写真を訂正し並べ替えました。失礼いたしました。
南部地方の直売所などには、9月の後半頃から食用ギクが並んでいたのをご存じでしょうか?
そのとき出回っていたものがこれらの品種だったんです。
食用ギクの品種で季節の移り変わりを感じられるなんて、
考えてみたらこの地方だけの贅沢かもしれませんね。
自然の恵みと人の営みに感謝です。
by 義人
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