大雪に見舞われた今週のある日、
ある食べ物を探して南部地方に行ってきました。
おいしくないのが美味しい。
不快なのがうれしい。
そんな不思議な食べ物「トコロ」を探すためです。
トコロとはヤマノイモ科ヤマノイモ属の蔓性多年草。
茎は蔓になって伸び、葉は自然薯などヤマイモとよく似ています。
食用とするのは根茎(いもの部分)ですが、不規則に分かれてひげ根が多く、かなり苦味が強いため、植物図鑑には「食べられません」と書かれていることが多いとか・・・(笑)。
とは言え、トコロは「延喜式」や「和名抄」、江戸時代の「野菜総覧」にも登場するので、日本人はかつてかなり広くトコロを食べていたと思われ、江戸時代には小市民的な食べ物の中に入り込んでいたことがうかがえます。
日本の食文化の中から消えてしまったトコロ。
なんと、青森県の南部地方に、「トコロ」を食べる食文化が残っていました。
同じ青森県でも津軽地方では食べませんから面白いものですね。
南部地方では、木灰を入れた湯でコトコトと時間をかけて煮込み、冷ましたトコロをそのまま食べるのが普通です。
ひげ根はとりますが皮はそのまま。冷ましてから指の腹でこすると、おいしいものほど皮がスルッと剥けるのだそうです。
ひと口目「うわっ!何コレ!!」
ふた口目「にげっ!(苦い!)」
三口目、四口目「・・・」
そしていつしか「大丈夫。苦くないかも。」(笑)
好きな人に言わせれば、
あの苦さと口中にまとわりつくような歯触りがたまらないようで、食べれば食べるほど美味しく感じるようになるのだそうです。
この地方に「トコロくずは残らない」という諺があります。
一度口にしたら、ただひたすら食べ続け、クズのような小さなトコロでも食べ残しがないという意味。まさに魔性のイモですね。
私は、不思議なイモ「トコロ」を見る度に、袋からトコロを取り出しては皮をむき、懸命に口に運んでいた小さな祖母の姿を思い浮かべてしまいます。
by 義人
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