青森市で羊羹と言えば、まず思い浮かぶのは甘精堂の昆布羊羹です。
甘精堂は明治のはじめに小さな茶店として開業。
その歴史もさることながら、このお店のすごいのはその発想力。
明治期の青森で「昆布」と「羊羹」の組み合わせに着目したのがすごい!
今でこそいちご大福のようにミスマッチの美味しさも市民権を得ていますが、
当時を考えるとその発想の自由さは驚くべきものがあります。
単に昆布を羊羹に練り込むだけでは昆布特有の生臭さが残ったり、
逆に昆布の風味が出なかったりするのですが、
昆布羊羹を作り続けて114年の歴史を持つ甘精堂なればこそ、
試行錯誤の中から自社独自の製法を生み出し、
昆布の良いところだけを羊羹に練り込む技を持っています。
一方、最近、青森市の特産品として注目を集めているのが「カシス」。
昭和50年に弘前大学の教授によってヨーロッパから苗木が持ち込まれ、
今では国内の8割以上の生産量を占める日本一の産地となりました。
青森は気候風土がカシスに適していることもあって、
味・風味ともに非常に優れていますが、それだけではなく、
冷涼な気候を生かして農薬を使わない自然栽培で丁寧に育てられ、
一粒ずつ手摘みされる青森産カシスは、
安全で品質の高い最高クラスのカシスとして注目されています。
そして、甘精堂がカシスに着目して誕生したのが「かしす羊羹」。
カシスと白あんの配合=酸味と甘さのバランスに研究を重ね、
試行錯誤の上に完成させた紫色のきれいな羊羹です。
一口食べてみると羊羹なのに甘酸っぱい感じがするので驚きますが、
食べ進めるとこれがなかなか美味しい。
白あんの具合が絶妙なのでしょう、
決して甘すぎないやわらかな甘さの中に、
カシスのさわやかな酸味が包まれているような感じです。
製法は羊羹ですが、その味わいは洋風。
「紅茶に合うわ」と女性にも評判でした。
明治時代は青森の特産品だった昆布を使って、
青森らしい和菓子として「昆布羊羹」を誕生させた甘精堂が、
現代の青森の特産品カシスを使って誕生さえた「かしす羊羹」。
昆布羊羹のように100年の銘菓となってほしいものです。
by YOSHIHITO
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