全国有数の水産都市として知られる港町八戸。
大漁旗が似合うこの土地は、藩政時代の昔から「鮫浦みなと」と呼ばれ、栄えてきました。
八戸の沖合は、津軽海峡をこえて流れ込む対馬海流(津軽暖流)と北からの親潮(寒流)、南からの黒潮(暖流)がぶつかり合う豊かな漁場で、さらに、水深千メートルを超える深海があります。
このため、八戸の前沖では、四季を通じて、実にさまざまな地魚が獲れるのです。
代表的な魚のひとつがサバです。
「八戸前沖サバは脂のノリが格別」とよく言われるように、
夏の間、群れをなして北上したマサバは、
秋、脂をたっぷりと蓄えて八戸沖にやってきます。
八戸では昔からサバがよく獲れていましたが、
意外にも八戸のサバ食文化は歴史が浅いと言います。
新鮮なものがいつでも手に入るため、
独自の保存技術や加工技術は必要なかったのでしょう。
また、極上の脂がのった八戸のサバは、煮ても焼いてもおいしいので、
あえて生で食べようとは思わなかったのかもしれません。
歴史が浅いというか、
北陸地方や紀伊半島のそれとは質が違うのだと思います。
地元では「サバはもらうもの」と言われるほど身近な大衆魚。
安くておいしいのが当たり前で、
そのすごさに気づいていないところがありました。
聞くところによると、
ある漁船がたまたま八戸沖で網を入れたところ、
身の厚みといい、脂ののりといい、極上のサバがたくさん獲れたため、
その噂が広がって、サバの名産地として知られるようになったのだとか。
驚くことに、
今では全国の〆サバの約8割がここ八戸でつくられています。
「八戸前沖の鯖は肉厚でぷりぷり。脂の質ものりも文句なし。食べればわかる!」
八戸の人々はこう胸を張ります。
たしかに、
〆サバも、棒ずしも、サバしゃぶも、
ぷりぷりっとした食感と上質な脂の甘さが口中に広がり、
それはそれは口では言い表せないほどのおいしさでした。
せっかく八戸に行ったなら、
八戸前沖のおいしいサバを是非ともお試しくださいね。
by義人
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