酒造りの長”杜氏”には地域ごとの流派のようなものがあります。
青森・岩手の南部杜氏や兵庫の但馬杜氏が有名で、
地域の名前を冠しながらそれぞれの酒造りを伝承しています。
津軽地方にも津軽杜氏と呼ばれる流派があり、
少し前までは杜氏組合を組織して津軽の酒造りを伝承してきました。
蔵の減少などにより今ではこの組合はなくなり、
津軽杜氏組合で酒造りを学んだ杜氏は数少なくなったと聞きます。
このような中、今も現役で活躍している津軽杜氏に対馬義昭さんがいます。
津軽杜氏組合で酒造りを学んだ生粋の津軽杜氏です。
対馬杜氏が現在酒造りを行っているのは黒石市の中村亀吉。
黒石にある3つの蔵の中では一番若い大正時代創業の蔵ですが、
数年前から創業者の名前を冠した「亀吉」というお酒を出していて、
これがかなり評判になっています。
通常銘柄酒「玉垂」に比べて精米歩合を上げ、
すべて純米酒以上のグレードで造られるこのお酒は、
日本酒本来の美味しさをストレートに感じることができます。

「亀吉」の魅力の一つに、
食中酒として最高のポテンシャルを発揮することがあります。
フランス料理では” 料理とワインのマリアージュ” という言葉が定着し、
お互いを引き立て合うベストパートナーとして認め合っていますが、
和食においては料理とお酒の関係はあまり重要視されていないように思います。
確かに、甘ったるい印象の強かった以前の日本酒だと
必ずしも料理との相性は良くなかったですし、
過度の吟醸香を放つ日本酒は料理の邪魔をしていました。
しかしこの「亀吉」は違います。
米本来の旨味が引き出されているため和食との相性が抜群に良く、
米本来の酒の香りは食欲をそそります。
またキレが良いためさっぱりとした飲み口が食を進め、
食べるほどに、飲むほどに、お互いの旨味が相乗効果で引き出されるので、
間違いなく飲み過ぎてしまうほど相性がいいのです。
和食、特に寿司や刺身を食べるときには最高です。
津軽杜氏「対馬義昭」氏は、
農業を行いながら、冬は酒造りを行う伝統的な杜氏であり、
これは段々と少なくなっている日本の文化の一つです。
津軽杜氏が醸す津軽の地酒「亀吉」。
いつまでも残っていてほしいものです。
by YOSHIHITO