青森一のいちご産地といえば、
八戸市とおいらせ町(旧百石町)にまたがる太平洋沿岸の地域。
特に八戸市の浜市川地区は、
早くから集団栽培に取り組んだイチゴ産地の老舗(!)です。
どうして八戸がいちご産地になったのか。
地域外ではあまり知られていませんが、
そこには一人の男の物語があるのですよ。
浜市川は、ヤマセの影響が強く、たびたび冷害に見舞われる地域です。
そのため、農家の男達は、北海道のニシン場へと出稼ぎに行くの当たり前でした。
しかしある年(1953年)、出稼ぎ中の22人の仲間が、大嵐のために命を落としてしまいます。
突然父親を失い、深い悲しみにくれる子供たち。
そんな教え子たちの姿を見て、
当時地元の小学校長だった細川重計先生が動き出しました。
親子が離ればなれになる出稼ぎなどしてほしくない。
出稼ぎなどしなくても生活に困らない家庭であってほしい。
その願いから、
当時は珍しかったイチゴ栽培を呼びかけたのです。
しかし、農家でもない素人の言葉に耳を貸す者などいませんでした。
それでも細川先生は熱心に家々を説いてまわり、
翌年、先生の熱意と気迫に応えた7人の男が集まって、
八戸のイチゴ栽培が第一歩を踏み出したのでした。
あれからもう50年。
露地栽培で出荷時期が限られていた八戸イチゴは、
施設栽培が広がり、
いろいろな作型が行われるようになり、
より地域に適した新品種へと切り替えられ、
今ではほぼ一年中イチゴを収穫できるようになりました。
八戸イチゴを語る上で欠かすことができないのは細川先生のこと。
先生の功績なくして今日の八戸イチゴはありえなかったのだそうです。
細川先生は十数年前に故人となられましたが、
先生の夢と情熱は、今でも生産者の方々にしっかりと受け継がれています。
さてさて、この地域の特徴のひとつが、
昔ながらの品種「麗紅(れいこう)」が今なお栽培されていること。
新品種への切り替えが進み、たしかに量は減ってしまいましたが、
「イチゴ本来の味がする」と毎年楽しみにしているファンは多いようです。
お隣のおいらせ町でも栽培が盛んな「麗紅」の旬は3月~6月。
大粒が多い旬の前半は生食で、
小粒が増える後半はジャムやケーキにしてお楽しみください。
全国的に大変珍しい「麗紅」は、
驚くことに地元ではほかの品種よりむしろ安く手に入ります。
もしもお店で見かけたら・・・、
迷ってはいけません。買いです。買い。箱買いです(笑)!
by義人
※果汁が豊富な「麗紅」は、ちょっとの衝撃にも傷みやすいデリケートなイチゴです。
お求めの際はその点にご注意ください。
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