日本一のりんごの生産量を誇る弘前市にある弘前市立博物館では、
現在、小柳吉次さん(弘前市出身、昭和18年生)のボタニカルアート展、
「りんごを描く」を開催中です。
小柳さんはNHKのお仕事を数多くしており、
小柳さん執筆のNHK趣味百科「植物画を描く」(1997年発行)は、
NHK出版の書物の中で一番売れた本と言われていて、
日本において植物画の流行を作った人とも言えるんです。
拓殖大学卒業後、就職しますが、教師を目指し武蔵野美術短大へ進みます。
拓殖大学の頃から絵は描いてましたが、
NHKが「趣味の園芸」のイラストを描く人を探しているということで
小柳さんに声がかかり、それから植物画の世界へ。
植物図鑑や塗り絵の絵などを得意とし、花や葉の大きさ、数、色なども
現物をそのまま原寸大でみずみずしく描き取っています。
今回の見所は、弘前市立博物館の発案で小柳さんに描いてもらった
本邦初公開の「りんごの花」20種類の植物画。
小柳さんは実際に「りんご公園」に3年前から通い、
モノサシで、花やつぼみ、葉の大きさを計り、
本物と同じ色を付けるという、繊細な作業の末、完成させました。
今回はその完成披露も兼ねた展覧会となっています。
原寸大のりんごの花の絵の下に付けられているキャプションには、
どんなりんごの花なのかが理解できるように、名前だけではなく、
りんごの実のカラー写真も付けてあって、
「世界一の花は、やはり大きいんだ~。種類によって花の色も違うのね」と、
ついつい時間を忘れてしまうほど見入ってしまいます。
その他の植物画26点についても、構図にこだわり、
背景のあるものも数点あり、現物をそのまま描き取っているのに、
個性を感じさせる作品ばかりです。
洋画も植物画も描いている小柳さんならではの表現力が見て取れます。
はがき半分程のペン点描画5点も展示しているのですが、
1枚、1週間かかって制作されているんですって。
細かい点で描かれているため、虫眼鏡も用意するという心配りも!
その他、夢と現実が混在しているような油絵15点。
じ~~っと見ていると動物のようなものが見えるような気になったり、
背景に銀箔を貼っていたりと、圧倒的な迫力と独特の存在感があります。
小柳さんの作品の公的な場での個展は、今回が初めて。
それだけに、小柳さん選りすぐりの自信作が並んでいました。
また、常設では「津軽の歴史展」を開催中。
初代藩主津軽為信の統一から12代昭代の廃藩までの津軽の歴史を概観しています。
現在は、禅林街の長勝寺が工事中ということで、
2~3年前から長勝寺からお預かりしている「津軽為信木像」(慶長12年、1607年)などが展示中。
「津軽為信木像」は、為信公が在京中、自ら都の仏師に作らせたものと伝えられており、
普段は明るい場所で見ることができません。
工事が終了すれば、タイミングを見て、長勝寺に戻ってしまいますので、
本当に貴重な機会ですよ!!
また、ここの博物館は前川國男建築でも有名です。
しかも、清水建設時代の最後の前川作品。
公園の片隅にお邪魔しているというコンセプトで設計されたため、
一本も木を切らずに建てられました。
前川氏はここのロビーからの眺めを大変気に入っておられて、
ロビーのソファーに腰掛け「櫓と岩木山が見えて、ここからの眺めが一番好きだ。
いいなあここの景色は。」と語っていたそうです。
市内の60歳以上の方(平成21年度から65歳以上)、小中学生、留学生は無料のため、
ロビーでセルフサービスのお茶を飲みながら寛いでいる年配の方の姿が目立ち、
弘前公園と一体化した散策ルートの定番になっているようです。
「りんごを描く」は7月13日まで開催しています。
企画展ごとに記念スタンプもあるので、コレクションするのも楽しいですよ。
By Kuu
《りんごを描く-小柳吉次展-》
会期:7月13日まで開催(6月23日、30日、7月7日休館)
会場:弘前市立博物館 弘前市大字下白銀町1-6 弘前公園内
0172-35-0700
9:30~16:30
観覧料:一般280円、高大140円、小中80円
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