日本海を間近に眺めることができるローカル線として旅人に人気の高いJR五能線。
海に浮かぶ奇岩、全てを赤く染める夕陽…流れる車窓風景は旅人を飽きさせることがありません。
…が、実は五能線の魅力は車窓風景だけではありません。
景色に気を取られて通りすぎるには、あまりにももったいない駅が存在するのです。
駅名は「驫木駅」。
鰺ヶ沢方面からなら、景勝地として名高い千畳敷を過ぎて3駅目。
誰かが気まぐれで置いていったかのように、“ぽつねんと”佇む小さな駅です。
ここが…?なんて言わず、とりあえず列車を降りて駅を出てみましょう。
思った通り、やっぱり何もありません。駅舎と海と線路。それだけです。
それなのに、なぜでしょうか。
じっと駅舎とその後ろの海を眺め、
駅舎の中で立ち止まって上下5本しかない時刻表に苦笑いし、
ホームに出て左右どちらも「線路しかない」ことを確認すると、
「ほんと、何にもないんだ…」と、いつも見る駅とは違う、不思議な気持ちがしてきます。
そしてまた駅舎の中を覗くと、目につくのが「驫木駅 駅ノート」。
訪れた人が自由に書き込むことができるノートです。
めくってみると、
「いつか来たかった駅。来て良かった。驫木駅サイコー」
「驫木駅に来て元気をもらった。ありがとう」
などのさまざまな感謝の言葉が綴られています。
晴れればきらきらした海が、吹けば荒々しい海が見える、そんな場所に「ある」だけの駅。
それなのに、どうしてこれほど人をひきつけ、癒しを与えるのでしょうか?
その答えは、駅から見える海を眺め、つらつらと物思いをしてみれば、きっと分かります。
ああ、なんだか時間がゆっくりしてて…うん、そうだね、確かにいいなぁ、ここ。
…なんて、いつの間にか心が日常から”ふわり”と浮き上がってしまうからです。
何にもないからこそ、全てを受け入てくれる、懐の深さがあるのかもしれません。
さて、どうでしょう。
あなたの旅は、急ぎの旅ですか?
そうでないなら、車窓から過ぎる風景を眺めるだけでなく、一度列車を降りてみませんか?
これまでは気づかなかった素敵なものをみつけられるかもしれません。
そしてそれは、あなたの旅にちょっと、豊かな彩りを添えてくれるのではないでしょうか。
驫木駅は、そんな「急がない」ことの大事さを教えてくれる駅です。
by くどぱん!
晴れるとこんな感じです。バイクと比べるとその小ささが分かります。
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