この記事で紹介する「秋元温泉」「なりや温泉」「でわの湯 湯の沢山荘」は、現在営業しておりません。予めご了承ください。
つい先日までやけに暖かかった青森ですが、それでもすっかり秋は深まり、紅葉はもう終盤にさしかかりました。こうして気温が下がり、日が短くなってくるとやけに恋しくなるのは暖かい食べ物であり、温泉です。青森育ちの私が言うのですから間違いありません。
ということで、前回の古遠部温泉に続いて、今回は湯ノ沢温泉を紹介します。
湯ノ沢温泉は、一軒宿である古遠部温泉とは違い、「秋元温泉」「なりや温泉」「湯ノ沢山荘」の三つの温泉からなる温泉郷です。お互いに歩いていけるほど近くにありながら、それぞれが異なる源泉を持っているというのが特徴の湯治場です。
では…そうですね、道路に沿って奥にあるお宿から順にご紹介したいと思います。
「秋元温泉」
創業はおよそ400年前。矢立の名湯(秋田との県境が矢立峠)として親しまれていましたが、明治維新後に一時温泉を閉鎖、その後大正初年に改めて秋元温泉として開湯したそうです。泉質は酸性硫黄泉。見た目には緑がかった濁り湯で、主な効能は神経痛、リウマチ、冷え性などです。
お風呂も建物も比較的新しい雰囲気で快適そうです。でも湯治部のお部屋にはしっかり「ちゃぶ台」があって、照明(というより「電気」と呼びたい!)のスイッチがビニールの紐で延長されているあたり、やはり懐かしい雰囲気が漂います。
「なりや温泉」
大正の末頃から営業されている温泉です。浴場は二つあり、以前はそれぞれ泉質が異なっていたそうですが、現在はいずれも同じ食塩硫化水素泉です。色は白濁、主な効能はリウマチ、神経痛、胃腸病などとされています。
写真はお風呂に続く廊下です。ちょっとほの暗い中に見える「第二浴場」の看板…初めて見てもなんだか懐かしい気がするのは私だけでしょうか。お部屋も古いながらも清潔に保たれています。
「でわの湯 湯の沢山荘」
昭和37年開湯という、比較的新しい温泉です。泉質は含土類石膏食塩泉というもので、色は黒っぽく、マグネシウム・マンガンの含有量は日本一なのだそうです。主な効能は神経痛、胃腸病、貧血症など。
特徴はなんと言ってもお風呂でしょう。床がボコボコになるくらい析出物がこびりついています(右上写真)。床もヒバ材で作られたお風呂なんですが…もう分かりませんよね。それに、お風呂のあるところの外観も年季が入って良い感じです。
このようにそれぞれ特徴を持った湯ノ沢温泉ですが、古遠部温泉さんと同じく、湯治客はだいぶ減ってしまったそうです。しかし、いずれの宿も旅館部(食事を提供する宿泊形態)が設けられており、短期滞在のお客様にも対応しています。もちろん立ち寄り入浴も可能です。
とはいえ…
丁寧に手入れがされた古い木の廊下を、ぎしぎし音を立てながら踏み歩く。
知らなかった人と炊事場で会話を交わし、おかずを交換する仲になる。
ご飯を食べる時間には布団をたたみ、ちゃぶ台を出す。
気の向くまま温泉に浸かり、気ままに過ごして時々ふらりと外に出る…
そんな湯治の風景が失われゆくのは少し、残念な気がします。
などと考えながらふとケータイを開けたところ、「圏外」の表示。
むむっ?…いや。ですよね。
湯治に来てまであれやこれやと気にしてたら、どんないいお湯も台無しになりそうです。
便利な反面何かと忙しい世の中ですが、日常から少し離れて疲れを癒す、これは湯治場の正しい姿であるのだ、と思いました。
by くどぱん!
○秋元温泉
平川市碇ヶ関西碇ヶ関山1-26
TEL.0172-45-2137
○なりや温泉
平川市碇ヶ関西碇ヶ関山1-16
TEL.0172-45-2228
○でわの湯 湯の沢山荘
平川市碇ヶ関西碇ヶ関山1-17
TEL.0172-45-2531
※立ち寄り入浴はいずれも300円(広間利用などは別料金)
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。