早いもので、今年のカレンダーもあと二週間を残すのみとなりました。
風も日々冷たさを増し、なんだか妙に気持ちも慌ただしい…ここらでひとつ、“ほっこりと”ココロにリセットをかけたくなり、弘前市の「炉辺」(ろへん)さんにお邪魔しました。
炉辺さんはお店を始めて37年。津軽のさまざまな郷土料理が味わえるお店です。
暖簾をくぐって店内に入ると、まずはねぷたの衝立がお出迎え。こんばんは。
カウンター以外の席は、囲炉裏を囲んだ掘りごたつ式のものになっています。
店名は、“家族みんなが揃って団らんする囲炉裏端(=炉辺)”からとったもの。
名前から想像した通りの、ゆっくりと落ち着けそうな雰囲気ですね。
さてと、今日も寒かったので、温かいもの…貝焼き味噌なんかいいですね。
…あれ?イカやらホタテやらナスやら春菊やらえのきやら、具がたくさんでてきました。
「貝焼き味噌」って、卵とじのこういうものかと…
こんな貝焼き、見たことないです!
と、ご主人の成田さんに詰め寄った(?)ところ、「昔は、各家庭で残ったおかずを、父親が一杯やるために全部入れて鍋のようにしたものなんですよ。それを肴にちびちびと飲むわけですね。こういう貝焼きも、昔からあったものなんです。“けやきみそ”と呼びます」とのこと。
…なるほど。
炭火で焼かれてぐつぐついっている“けやきみそ”、見ているだけで嬉しくなってきます。
お味は…うん、確かに酒の肴にもぴったり。
体が内側から温まって、自然に「ほっ」と息を吐くような味わいです。
じゃあ次…冬の味覚といえば、西海岸で獲れるハタハタ。これも好きですね。
私の家では、あえて小ぶりのハタハタを買ってきて唐揚げにしていたことを思い出します。
ちょっとくらい大ぶりでも、頭からがっつり、かぶりつきましょう。ウマイ。
真鱈の白子の刺身。津軽弁で「“たつ”の刺身」とよく表記されますが、個人的には「たづさし」。今日のはずいぶん大きくて立派です。
しかしこれが南部になると「キク」って呼ばれるんだから、青森は面白いですねぇ、美味しいですねぇ。酒が進んできて筆も滑らかですねぇ!(^_^;)
最後はけの汁。ダイコン・にんじん・ごぼう・ぜんまいなどの野菜・山菜と、油揚げ・凍み豆腐などをさいの目に切って煮込んだ、味噌仕立ての汁物です(※)。家によって大豆が入ったり入らなかったり、少し材料が違ったりしますが、津軽で広く作られる郷土料理の定番です。(※地域によっては醤油味の場合もあります)
津軽人の私としては、やっぱり「懐かしい」と表現したい味です。
”そういえば古い家の頃は、大きな鍋にたくさん作って、台所に鍋のまま置いてたっけ…”なんて風景が目に浮かぶようです。温め直すたびに、味わいが深まるんですよね、これ。
…こうして料理を味わい、会話を楽しむうちに、津軽の夜は静かに更けていきます。
炉辺さんはその名のとおり、雪の舞う季節にも街角に”ぽっ”と灯りをともし、「ちょっと寄って囲炉裏で暖(ぬぐだ)まりへんが」と語りかけるような、しみじみといいお店です。
by くどぱん!
○炉辺(ろへん)
弘前市山王町5-2
Tel.0172-32-9491
営業時間:12:00~14:00、17:00~23:00(L.O.22:30)
定休日:火曜日
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。