青森県立郷土館は、1931年に第五十九国立銀行青森支店として建設された建物。
斜陽館(五所川原市金木)や第五十九銀行本店本館(弘前市)の設計者である堀江佐吉の七男堀江幸治による設計で、青森空襲も免れ、長い間、青森市の金融の中心を担っていた建物です。
レリーフが施された円柱や回廊など、銀行時代の名残が見てとれるこの建物は、国の登録有形文化財になっています。
現在では郷土館として地元の方々に親しまれていて、当時、美術館がなかった青森県では、1973年9月の開館以来、展覧会を開催するなど、芸術観賞の場としても使われてきました。
そんな歴史ある元銀行の営業店舗のスペースでは、硬派なのにおもしろい展覧会が開催されています。
その名も『サムライ・チャンバラ博覧会~武の実像と虚像』。
江戸時代以降の刀などの武具や資料、青森県内に受け継がれてきた古武術の流派、時代劇などの懐かしのヒーローなど、多様な「武」について紹介している企画展。
展示室に入るなり現れるのが試合でも始まっちゃいそうな30畳のスペース。
手に触れることができる竹刀や道具を見ているだけで、剣道部のマネージャーをしていた頃を思い出しちゃいます。
こちらは、週末には公開演武が行われたり、黒頭巾を付けることができたりと、お子様にも人気のコーナーです。
防ぐ、斬る、抜く、薙ぐ、突く、泳ぐ、打つ、撃つ、射る、捕らえるなど、分かりやすくコーナー分けされた展示スペースには、およそ600点の作品や資料が。
実戦で使われた無数の刀傷が印象的な木刀。
二つの指で竹をつまんでいるこの道具も卜傳流剣術の「風波の伝」という剣術の稽古道具。
そして、ねぶた祭りの原点、ケンカネプタの様子も展示されていました。
当時のねぶたの原点と言われているものは「ロウソクだっせ(出せ)、だっせ」と言って、ロウソクやお金を集めて歩き、「ロウソクださなきゃカッチャグ(引っ掻く)ぞ」って言っていたそうですよ。
で、「だっせ、だっせ」が「ラッセ、ラッセ」になったんだとか。
他にも、凧絵などの武者絵、五月人形などに表現された武士像、小説や時代劇の中の侍、チャンバラごっこなどの大衆文化などが紹介されています。
ずらりと勢ぞろいしているのは、赤穂浪士。
時代劇ブームだったころの、青森市内の映画館の様子も。
また、戦後GHQによって禁じられていた剣道を、青年教育のためのスポーツとして認めさせる努力をした方は、弘前の笹森順造さんなんだそうで・・・。
笹森さんの努力がなければ、今頃、日本には剣道がなくなっていかのかも。
そう考えると武士道の新渡戸稲造さんといい、総合格闘技のグレイシーのルーツといわれるコンデ・コマさんといい、青森県人は武道に大きな影響を与えているんですね。
近年、国内外を問わず、日本文化や武士道が静かなブーム。
先日の野球のWBCも、「侍ジャパン」で熱狂の渦でしたが、こちらの企画も負けていません!!
これまで継承されてきた武の文化を、本邦初公開のものも含め、遊び心満載で紹介している稀に見る企画。
何が実像で何が虚像なのか、この春休みに本物の武芸や演武を見て、考えてみてはいかがでしょうか。
by Kuu
《サムライ・チャンバラ博覧会~武の実像と虚像》
会期 2009年5月6日(水)まで
開館時間 9:00~17:00(5月1日からは18:00まで)
会場 青森県立郷土館(青森市本町2-8-14 017-777-1585)
観覧料 一般310円、高大生150円(小中生無料)
■デモンストレーション(公開演武と講演)
4月 5日(日)【演武】當田流棒術、卜傳流剣術=弘前藩
4月19日(日)【講演】「居合と杖術」体験講座
4月26日(日)【講演】「本覚克己流柔術の研究史」
5月 3日(日)【演武】當田流剣術=弘前藩
5月 4日(月)【演武】當田流棒術=弘前藩
5月 5日(火)【演武】小野派一刀流剣術=弘前藩
【時間】13時30分~14時 【場所】大ホール
■ワークショップ 初心者向けの古武術体験、「黒頭巾」の着け方講座など
【日時】期間中の毎週日曜、13:00~13:30 【場所】大ホール
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。