パン1個37円。
これは昭和の話ではありません。現在のお話です。
その主人公は弘前市・パンロワールのマヨネーズパン。
お店の誕生は昭和52年と比較的新しめですが、オープンベーカリーと呼ぶのでしょうか、袋に入っていない焼きたてのパンを棚に並べて販売する、というスタイルを弘前市で始めたのは、こちらのお店だろうと思われます。
上の画像は開店当時の本店。
私は実家からほど近い場所にあった富田店に行っていたのですが、そのたたずまいはなんだか洒落た感じで、シャイな私は当初、入るのをためらったほどでした。
(※富田店は昨年、残念ながら閉店しました)
そんなシャイな私に福音がもたらされたのは中学のある日、母親の手によってでした。
「新しいパン屋のパン買ってきたよ」と言うその紙袋の中には何種類かのパンが入っていたのですが、目を引いたのは5つくらいだったでしょうか、ビニール袋に入れられた、ころんと可愛いパン。
これは何かと尋ねたら、返ってきた答えは「マヨネーズパン」。
…パンにマヨネーズ?何をおっしゃる、マヨネーズはアスパラなりブロッコリーにつけるものでしょうが。
しかし、現在の私に通じるそんな斜に構えた考え(←え?)は、一口で吹っ飛びました。
メーカーもののパンとは異なるもっちり、しっとりとした食感。
そして”ちょこん”とのったマヨネーズ。これほどパンに合うとは…
まさに「くどぱん!」の家にパンの文明開化が訪れた瞬間です(※あくまで主観です)。
発売当時のお値段はなんと30円。
以来、「街(まぢ)さ行が~」(弘前市民が土手町に遊びに行く時にこう言います)と出かけた帰りに立ち寄って一個二個と買ってみたり、持ち合わせが少ないとか甘いものの気分ではない時の買い食いにと、マヨネーズパンの活躍の場は広がっていったのでした。
腹ぺこなのにお金のないセーガク(学生)さんの強い味方。
そのパンが未だにたったの37円で売られているなんて、驚き以外の何者でもありません。
そしてパンロワールさんといえばもう一つ忘れられないのが「ハンバーガー」。
こちらも手の大きさと比べてもらえれば分かりますが、やはり可愛いサイズのパンです。
特徴はハンバーグに「しいたけ」が入っていること。
「なんで?」と図々しくも本店の竹内春美さんに尋ねたところ、「何でかしら、入れちゃったのよね~」と明るく答えてくださいました。
そうですよね、別にいいですよね、美味しいんですもん。
こちらもやはり、しっとりとした甘めのパンに、しいたけ入りのハンバーグ。そしてレタス。
ファストフード店のものとは全く違う、手作り感あふれる優しいお味です。
そしてそんなパンロワールさんのハンバーガーは、まだファストフードのお店などろくになかった弘前で、私が生まれて初めて食べたハンバーガーでもあります。
こちらも発売当初150円だったものが、現在168円。
小麦の高騰で泣く泣く上げた、と竹内さんはおっしゃいますが、いいえ、十分お安いです。
開店して30年を超えた今、お客さんの中には子供の頃食べて以来のファンで、今は家族のためにまとめて大人買いしていくようなお母さんもいらっしゃるのだそうです。
パンロワールさんは、そんなちょっと嬉しい話がよく似合う、私のもう一つのふるさとベーカリーです。
いつまでも、美味しいパンを焼き続けてくださいね。
by くどぱん!
【パンロワールの「マヨネーズパン」】
パン年齢 昭和52年頃誕生の33歳くらい
弘前市新町149 tel.0172-33-5680
7:15-19:00(定休 ⽔曜⽇)
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。