いきなりですが問題です。
マグロで有名な本州最北端の大間町では、年配の漁師の方が忙しい時期に最も売れるというモノがあります。それは何でしょうか?
答えはコレです。
津軽海峡の荒波とたたかっている漁師の朝ご飯として、はたまた、船上でのおやつとして食べられているのが、宮野製パンさんの「アンドーナツ」です。
へらべったいドーナツ生地の中に粒あんが入った大変シンプルな「アンドーナツ(125円)」は、窯がなくても鍋ひとつで作れることもあり、創業当時からずーっと作られ続けてきた「大間の定番」のパンとして地元の方に愛されてきました。
宮野製パンさんの創業は昭和一桁代です。町内の奥戸(おこっぺ)地区で創業しましたが、昭和30年代半ばの大火を契機に現在の大間地区に移転しました。
当初は、駄菓子屋・飴屋でしたが、早くからアンパンや、クリームパン、アンドーナツなどのシンプルなパンも焼いていたそうです。漁師の朝ご飯は、80年もの長きに渡り大間の人たちに食べ続けられてきた、ということになるんですね。私の2倍以上の年齢・・・ス、スゴイ!
現在、お店でパンを焼いているのは二代目の宮野毅さんと、毅さんの息子で三代目の成厚さんのお二人です。
二代目の毅さんは、昭和20年代半ばからお店に入り、80歳を超えた現在でもまだまだ現役。三代目の成厚さんとともにパンを焼き続けています。黙々と仕事をするその姿からは、職人としての威厳のようなものも感じます。
一方、成厚さんがお店に入ったのは、毅さんの病気がきっかけでした。地元を離れてケーキと和菓子の修行をしていたある日、毅さんが病気になったという連絡を受けて帰郷。ところが・・・
「帰ってみたら、父が元気に雪かきしていたんですよ。」と、成厚さんは笑顔で話してくれました。重い病気ではなく、すっかり元気になっていたのです。
こうしてパン作りを始めることになった成厚さんは、今後のことを考え、店で作って売る仕組みをしっかり作ろうと決意。東京からパンの先生を招いて一からパン作りを学び、そして、お客様のニーズにこたえるため、少量多品種のパン作りを始めたそうです。
ところで、私が宮野製パンさんと出会ったのは、なぜかマグロ解体ショーの会場。当然マグロを目当てに行ったわけですが、会場でパンが販売されている・・・。はて? しかもクリームパンと・・・ええっ、マグロバーガー? さらに、ショーの進行役を務めていたのが、何と成厚さんだったのです。
こんな出会いでしたから、マグロ以上にパンに対する印象が大きく残っています。この時食べたのはクリームパン。海を見ながらほおばり、クリームの冷たい食感が口の中に広がった瞬間、なぜか小さい頃よく通っていた地元のパン屋さんを思い出しました。「アンドーナツ」もそうですが、シンプルなパンだからこそ、多くの人が小さいころからよく食べ、深く心に残っている味なんでしょうね。
数あるパンの中でも、地域にとっての定番商品は「アンドーナツ」です。今は少量多品種をモットーにしているため、通常期で一日20個程度作っていますが、かつては一日に1000個(!)も売れたという大ヒット商品です。粒あんの甘味が優しく感じ、「もう1個ください!!」と、おかわりが欲しくなるような一品です。
「今日作ったものは今日しか売らない」がモットーの宮野製パンさんは、翌日の配達の際に前日の売れ残りをすべて回収する徹底ぶり。大手メーカーにはできない方法で、地元に愛されるパンを作り続けています。
そして現在、成厚さんの長男一成さんが洋菓子担当として工場に入っており、親・子・孫の三世代が同じ場所で仕事をしています。本州最北端のパン屋さんは、これからも地元に愛されるふるさとベーカリーを焼き続けてくれること間違いなしです。みなさんも大間にお越しの際は、ぜひぜひふるさとベーカリーを味わってみてください。
by ハッピーハンド
がんばろう東北!青森から東北の元気届けます。
<宮野製パンの「アンドーナツ」>
パン年齢 昭和一桁代誕生の80歳くらい
大間町大字大間字大間86 Tel.0175-37-2718
9:00-18:00(定休 日曜日・1月1日~1月3日
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