いきなり私ごとで恐縮ですが、学生時代、弘前市立病院に10日間ほどお世話になったことがあります。

コンクリート外壁は、遠目からはちょっと無機質な感じも受けますが、近づいてみると、建築時にコンクリートを流し込んだ板の型枠の木目がそのまま残っていて、コンクリートなのに木? と思わせるような見事なデザインなんです。
この素晴らしい建築物を手がけた人物は、日本建築界に大きな足跡を残した前川國男氏です。この4月、この日本代表する建築家のプチ博物館が、弘前市にある木村産業研究所(こぎん研究所)にオープンしました。

実はこの研究所、建物自体が前川氏の処女作品(1932年・27歳)でもあるのです。芸術作品の中にできた博物館、それが「前川國男プチ博物館」です。

研究所に入ると飛び込んでくる前川氏のカッコイイお姿です。前川氏は、パリで世界的な建築家のアトリエで学んだ方で、国内201点、海外に12点の作品を残しました。このうちの8つの作品が弘前市に残っています。県内では弘前市だけの前川作品。母親が弘前市出身だったのです。

プチ博物館のメインは、2階の講堂をいっぱいに使った大展示室です。ここには、弘前市にあるすべての前川氏の作品を写した大きな写真パネルが展示されています。さすがプロが撮った写真だけあって見応え十分。作品の写真がまた作品ですね。

もちろん会場そのものが作品なので、実物の作品に包まれながら他の作品を見る、というちょっとした贅沢を味わっているということなのかな?
このほかにも、作品を収録した映像やスライドショーが放映されているほか、2階への階段の壁には、前川氏の足跡をたどる年表が写真とともに掲示されています。

この博物館を主宰している「前川國男の建物を大切にする会」さんによると、今後も徐々に展示物を増やしていくそうなので、幾度となく訪れてみるといいかもしれませんね。
ところで、弘前市に8つある前川氏の作品ですが、みなさん全部ご存じですか? 知らず知らずのうちに足を踏み入れているはずですよ。おそらく、弘前市民の大半は訪れたことがあるでしょう弘前市役所の庁舎も、実は前川氏の作品です。

・・・市役所の方は、素晴らしいところで仕事をしているんだなぁ。私自身も、このプチ博物館を訪れて初めて、知らず知らずのうちに前川氏の作品にふれていたことを知りました。
このほか、前川氏の作品には、弘前市・・・おっとっと、全部言ってしまえば、みなさんの楽しみが減ってしまいますよね。
すでに桜のシーズンがスタートした弘前。お城の桜を目当てにたくさんの方がいらっしゃると思いますが、ぜひこのプチ博物館にも足を運んでみてください。ここですべての前川作品を知って実物をめぐる旅にでかければ、城下町弘前の違った一面を感じることができると思います。
by ハッピーハンド
(※博物館内の写真は承諾を得て撮影しました。)
がんばろう東北! 青森から東北の元気届けます。
<木村産業研究所(弘前こぎん研究所)>
弘前市在府町61
開館時間 10:00~16:00
(5月9日以降は、平日のみの開館になります。)
入館料 無料