青森県立美術館で開催中の「今和次郎 採集講義」展。
展覧会ではちょっと経験したことのない感動がありました。
「凄いよ!面白いよ!今和次郎先生!!」
敬服する師に出会った気持ちです。
南伸坊さんが、今和次郎さんと「すごく気が合う」との思いを、
「あおもり草子」に寄せていましたが、その気持ちがよく分かります。
きっとブロガーの皆さんも、すぐにファンになることでしょう。
90年以上も前に今のブロガーのような視点で活動をしていたのが
今和次郎先生です。でも、先生の引き出しは、実に多彩です。
よく「考現学」の創始者という肩書きで呼ばれますが、
その活動は、現代の世相・風俗の研究家という範疇に収まらない
社会的な広がりがあり、ぜひ、いろんな立場の人に知ってもらいたいと思います。
今回の「採集講義」展では、今和次郎先生の多彩な活動を、
次の四つの構成でまとめています。
1 農村調査・民家研究の仕事
2 関東大震災-都市の崩壊と再生、そして考現学の誕生
3 建築家、デザイナーとしての活動
4 教育普及活動とドローイングのめざしたもの
その中で、「凄い」「面白い」と思ったところを少し紹介します。
<農村・民家研究のアプローチ>
このスケッチ、カラー写真より、はるかに表現力豊かです。
右上の見取り図のおかげで、家の内部のイメージが思い浮かびます。
農家の人の営みの描写が臨場感を増しています。
主役は人、というアプローチの姿勢が伝わってきます。
<震災復興の営みを都市再生の活力に、さらに考現学に>
1923年の関東大震災で先生は震災バラック調査を行い、
東京のあちこちで人々が作り出したバラックの仮設住宅を見て回り、
人々の創意工夫とたくましさをスケッチで表現しています。
それをモチーフに、店舗設計に活かすところに
先進性と必然性を感じます。
そして、東京の復興が進む1925年、考現学の初の調査として
「東京銀座風俗記録」をまとめます。
「採集講義」展のポスターにも使われているこの図は、その索引頁なのです。
INDEXの機能を果たしながら、調査の全体像と要約が一目で伝わります。
その銀座で4日間行った調査の集計表がこれです。
精緻なフィールドワークの証です。
<「見える化」を90年以上前から実践>
戦時体制に向かう1940年には、
「新時代の生活方向」と題した提案も行っています。
一家の主人、主婦、息子、娘、子供といった主体毎に
暮らしのかたちがどう変わるのか、
簡単に一覧できるようにつくられています。
押しつけがましくなく、すっと入る分かりやすさ、
心底、まいりました。
近年、情報共有の手法として「見える化」が注目されていますが、
先生は、90年以上前から実践していたのですね。
その表現の中心にあるのは「人間味」ではないでしょうか。
私たちは、日頃、主に文章と写真、パワーポイントなど定型化された手法で
伝えたいことを表現していますが、「人間味」が備わっているかどうか。
今和次郎先生の下で勉強したい、正直にそう思います。
「今和次郎 採集講義」展は、12月11日までです。お見逃しなく!
※このブログへの資料掲載は、青森県立美術館の許可を得ています。
by 頭脳パン
がんばろう東北! 青森から東北の元気届けます。
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。