もう、随分と昔の話になりますが、「日本酒」=「おじさんの飲みもの」といった私のイメージを覆してくれたのが、白神酒造の純米吟醸でした。
白神酒造は、青森県内の酒蔵の中では、世界自然遺産白神山地に最も近く、目の前にはブナの森を源流とする岩木川上流と雄大な白神山地の景色が広がっています。
前々から白神酒造でつくられている日本酒の美味さの秘訣が気になっていたので、蔵元杜氏である西澤さんに、白神酒造の酒づくりのモットーをお聞きしたところ、
「白神山地のブナの森で作られる雑菌の少ない綺麗で美味しい水や空気を利用しながら、太古の昔から白神のブナの森に棲んでいる乳酸菌をはじめとした微生物たちの力を借り、山廃仕込みに主軸を置いた酒づくりをしている。将来的には、山廃蔵にしたい」と話してくれました。
「山廃仕込み」とは、その蔵に棲んでいる乳酸菌などの微生物の活動を利用し、原料の力に任せてじっくりと熟成させる醸造方法で、人工の乳酸菌を加える「速醸もと」に比べて醸造日数が2倍以上かかります。また、蔵元の環境条件に左右されやすく、蔵ごとに香気成分が生成されると言われています。さらに、杜氏の高度な技術とセンスが要求される製法でもあり、白神山地の自然のパワー溢れる酒蔵で、美味しい「山廃仕込み」の日本酒ができるのは納得です。
これまで私は、どこの酒蔵のお酒も純米吟醸を好んで飲んでいましたが、ここの山廃は、山廃独特の臭みがなく、スッキリしていて、かつ旨味みとコクもあるので、和洋中どんな料理とも相性バッチリです。
酒づくりに欠かせないのは何といっても水。白神酒造では、白神山地のブナの森がゆっくりと時間をかけて蓄えた雑菌の少ない井戸水(白神山地からの伏流水)を使用していて、飲んでみると、とてもマイルドで甘みや旨みがありました。
さらなるこだわりは、吟醸・大吟醸酒は、鑑評会に出品する酒や高級酒に用いられている「袋絞り」の方法で仕上げていることです。「袋絞り」とは、袋を吊り下げた際、自然に垂れてきた日本酒だけを瓶詰めする方法で、圧をかけないので、手間ひまはかかりますが、機械などで絞る方法に比べて雑味が少なく、口当たりが優しい美味しい部分だけを味わうことができます。
この他にも、美味しく仕上がった日本酒を消費者に美味しく飲んでもうために貯蔵管理にもこだわるなど、白神酒造の酒は、白神山地のブナの森のパワーと真面目で正直な杜氏が織りなす究極の逸品だと思いました。
これからの暑い季節は、青森県産の魚介類をつまみにキリッと冷えた吟醸酒が特にオススメですよ。
byさっちゃん
<白神酒造株式会社>
住所:青森県弘前市大字米ヶ袋字村元22
TEL:0172-86-2106、FAX:0172-86-2529
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