青森県内でもようやく田植えをする姿があちこちで見られるようになりました。
一面の田んぼが広がる津軽平野の稲作地帯には、お米を白いご飯として食べる他に、食紅などを使って「いなり寿司」や「赤飯」を赤くし、お菓子のように甘くする食文化があります。私は津軽平野のど真ん中の出身なので、赤くて甘い「いなり寿司」や「赤飯」が当たり前でした。
しかし、赤い「いなり寿司」や「赤飯」だけではなく、もっと凄い郷土料理があります。
その郷土料理は、もち米を蒸して赤ジソやキャベツ、キュウリの古漬けなどを混ぜ合わせ乳酸発酵させた「すしこ」。見た目は、赤紫の赤飯のようですが、もち米の風味、甘酸っぱく、さっぱりとした味わいが特徴で、子供の頃からの私の大好物です。
津軽地方では、稲作農家が体力の必要な稲刈り時期などの栄養補給のため、「すしこ」を田んぼに持って行ったり、冬は一斗樽に漬け込んで、保存食としてご飯のおかずにしていたそうです。
私が疑問に思っているのは、「すしこ」は「飯寿司」(魚などに塩をまぶして、ご飯や麹などと漬け込み、乳酸発酵させた北前船がもたらした料理)なのか、それとも「漬物」のどちらかということです。
野菜を使った発酵食品だとすれば漬物ですが、原材料に占めるご飯の割合が多すぎます。
ご飯を入れて発酵させていることや、「すしこ」の「すし」が「飯寿司」由来のものだとすれば、魚が入っていない「飯寿司」の変化形とも考えられます。
発酵食品のどの分類にも属さない、極めて珍しい謎の料理です。
「すしこ」を食べている地域は、津軽地方の中でも稲作地帯(下のマップの赤い部分)で、つがる市にあるジャスコや西北地方の農産物直売所などでも販売されています。最近は、青森市内のユニバース(地元スーパー)でも見かけるようになりました。
「すしこ」の作り方は十人十色で、サラダ感覚で食べられるものから、マニア向け(ドロドロで、超すっぱい)のものまで様々です。「すしこ」初トライの方には、ジャスコやユニバースで売っているものがおすすめです。
「ご飯のおかずとして、ご飯を食べる」といった不思議な食文化ですが、”「すしこ」があれば、ご飯が何杯でも食べられる”と熱狂的なファンもいます。徐々に暑くなってくるこれからの季節、食欲がない時でもさっぱりしているので、栄養補給におすすめです。
by さっちゃん
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