「タルトタタンといったら京都のラ・ヴァチュール!」というくらい全国各地にファンの多い名店。そこの店主の若林麻耶さんが、青森を訪問した際に、御一緒する機会に恵まれました。
タルトタタンは、フランス発祥のりんごのお菓子。このお菓子の誕生には、諸説あるようですが、その中でも有名なのが、ラモットブーヴロンという小さな町のタタン姉妹のホテルでのお話。お姉さんがタルトを作ろうとした際に、生地を敷かずにりんごを焼いてしまい、慌てて上から生地をかぶせて焼き、ひっくり返したものをお客様に出したところ、それが好評で名物になったというものです。
ラ・ヴァチュールのタルトタタンは、麻耶さんの祖母のユリさんがフランス料理のお店を経営していた時に食後のデザートに提供したのが始まりで、他のタルトタタンと比べて高さがあるのが特徴です。お菓子づくりと言えば、分量や作り方、時間の正確さがポイントになりますが、タルトタタンは煮物のような感覚でつくるそうです。煮込んでは火を止めることを繰り返すことで味がどんどん引き出され、3日間ほどで完成するとてもテマヒマがかかるスイーツです。
ユリさんは、日本人の口に合う甘さ加減や、高さを出すために煮崩れしない調理法、タルトタタンに適したりんごの品種選びなど、日々改良を重ねることで今のタルトをタタンが完成させました。平成18年には、フランスのタルトタタン愛好協会から表彰を受け、ちょうどその頃に、「この味を守っていかなければ!」という思いにかられ、麻耶さんがお店を手伝うようなります。
麻耶さんは、子供の頃からユリさんの側で、りんごの皮むきの手伝いなどをしながら、タルトタタンをつくる姿を見ていたので、特に修業という形をとることなく自然に始めることができたようです。
昨年の2月にさんは92歳で亡くなり、今は、そのレシピを受け継いだ麻耶さんがお店を切り盛りしています。
タルトタタンの原材料のりんごは、青森県産の「ふじ」や「サンふじ」。りんごのお菓子と言えば、「紅玉」のイメージが強いのですが、タルトタタンづくりに最適なのは、煮崩れしにくい「ふじ」。しかも収穫したての水分の多いりんごよりも、水分量が少なくなった、春以降のものが適しているそうです。ラ・ヴァチュールのタルトタタンには、1ホールに25個ほどのりんごを使うというのも驚きです。
麻耶さんの青森滞在2日目に、弘前市のりんご公園にあるシードル工房kimoriに、1ホール分のタルトタタンを鍋ごと持ち込みました。
鍋から取り出すためには熱が必要なので、kimoriの薪ストーブを利用した実演が始まり、工房に居合わせた人たちのテンションが上がります。
鍋から取り出されたタルトタタンは、その形の美しさ、カラメルの照り具合や香りともに完璧です。
プルーン、干し柿、いちじく、梨などの果実の美味しいところ感を全て凝縮したような味で、改めてりんごの潜在能力の高さを感じることができる逸品でした。
今回の麻耶さんの青森への訪問は、京都で美味しいタルトタタンに生まれ変わった青森りんごの里帰りでもあったので、とても感慨深かったです。麻耶さんは、雪景色を背景にタルトタタンの写真を撮影していました。
byさっちゃん
NHK グレーテルのかまどHP
タルトタタン愛好会日本支部(未公認)facebook
ヴァチュール (La Voiture)
電 話 075-751-0591
住 所 京都府京都市左京区聖護院円頓美町47-5
営業時間 11:00~18:00
定 休 日 月曜日
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