布が貴重だった江戸時代、南部地方の農村の女性たちによって生みだされたのが南部裂織です。古布は南部地方で“ボット”と呼ばれ、寒冷な気候では木綿が育ちにくかった北国では、布がとても貴重だったので、使い古した布を細くテープ状に裂いたものを緯(よこ)糸に、使い古した麻袋を解いた糸を経(たて)糸にして織り込み、まったく新しい布を誕生させました。そうして出来た「裂織」は、こたつ掛けや敷物、仕事着や小物に至るまで様々な生活必需品へと生まれ変わり、再び暮らしの中で活躍してきたそうです。
八戸中心街にある「八戸ポータルミュージアムはっち」を拠点に活動している井上澄子さんは、裂織製品の生産や、ワークショップを通して南部地方のものづくりの精神を伝え続けています。
南部裂織は、1mm間隔に張った木綿の経(たて)糸に、1cmほどの幅になるよう細く裂いた古布を緯(よこ)糸を通しながら、地機(じばた)と呼ばれる手動の機(はた)で織ります。古布の模様と経(たて)糸の色との重なり方によって仕上がりの模様が変化するため、まったく同じ材料を使っても、ふたつとして同じものはできないそうです。
さらに、南部地方の伝統工芸に魅入られた(株)金入の代表である金入健雄さんが「東北スタンダード」というブランドを立ち上げ、自らのセレクトショップやインターネットを通じて南部裂織を発信しています。南部裂織は、材料が一定ではないので、織っている間にも裂織の表情は変化し、本来は仕上がりを想像することはできないのですが、偶然にもタータンチェックのように仕上がった織物が金入さんの目に止まったことがきっかけとなって誕生したのが下の写真の商品。ピンク系、ブルー系などのシリーズがありますが、赤系のチェック柄はGOOD DESIGNを受賞しています。
捨てられていたものや、古くなったものを材料として使わざるを得ないという意味では、上方の雅な道具とは対照的なものではありますが、美しく機能的でとても素敵です。
byさっちゃん
カネイリ ミュージアムショップ
住所 八戸市三日町11-1八戸ポータルミュージアムはっち1F
TEL 0178-20-9661
八戸南部裂織工房 澄(chou)
住所 八戸市三日町11-1八戸ポータルミュージアムはっち4Fものづくりスタジオ
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