前川國男(1905~86)、日本の近代建築を語る上で欠かせない建築家。
青森県弘前市は、8作品の前川建築が残る町。処女作から晩年まで年代を追って前川作品の変遷をたどることができます。
この前川が師事したフランスの建築家ル・コルビュジエの手による国立西洋美術館(東京)などの建築群が今年7月世界文化遺産に登録されて、前川建築の注目度が再度高まっているこのタイミングで、前川建築が現存する全国8自治体が連携して近代建築ツーリズムを進めることが決まりました。
前川の全時代を辿れる町「弘前」
前川國男は東京帝大卒業後、パリへ渡り、フランスの建築家ル・コルビュジエの下で2年間学びました。弘前出身の母をもつ前川は、帰国して最初に手掛けた木村産業研究所(1932年建築)を皮切りに弘前中央高校講堂、市庁舎、市民会館、市立病院、市立博物館を手掛けました。
前川建築最初の鉄筋コンクリート構造、コンクリート打ち放し、打ち込みタイル、初めて勾配を持たせた屋根、晩年の斎場にいたるまで、ほぼ全時代の前川建築を巡ることができる弘前は、日本のモダニズム建築の流れを辿れることができる町といえます。これらの弘前の建築群は、生活に密着した公共建築が多く、いまも多くの人たちに親しまれています。
近代建築ツーリズム
今回、前川建築が現存する地域が連携して近代建築ツーリズムを進めることが決まりました。埼玉県、東京都、神奈川県、岡山県、熊本県、新潟市、福岡市そして弘前市。それぞれ魅力的な建築が残っており、建築好きならずとも注目です。これらの地域が共同でウェブサイト開設やガイド育成などを計画しており、これまで以上に前川建築を巡る旅が楽しみやすくなりそうです。
弘前には、前川が建築した木村産業研究所内に「前川國男プチ博物館」があって、弘前の前川作品の写真パネルや竣工当時の写真・模型・手書き図面などの資料が展示されており、建築ファンにフレンドリーな町となっています。
弘前市の前川建築
では、ここで弘前に現存する前川建築を写真でご紹介します。
木村産業研究所
1932年建築、27歳の作品。
前川國男の処女作品、弘前唯一のル・コルビュジエ風の白亜の建物。
弘前中央高等学校講堂
1954年建築、49歳の作品。
前川設計の音楽ホールのさきがけ。
弘前市庁舎
1958年、53歳の作品。
モダニズム建築をより日本の気候に適したものに。
弘前市民会館
1964年、59歳の作品。
空間そのもののあり方を追求する建築。
(写真はページトップ)
弘前市立病院
1971年、66歳の作品。
雪国弘前で凍害にまけない建築に挑戦。
弘前市立博物館
1976年、71歳の作品。
弘前で全面的に打ち込みタイルが使われた最初の建築。
弘前市緑の相談所
1980年、75歳の作品。
弘前公園の桜の風情を断ち切らないために、初めて勾配屋根で建築。
弘前市斎場
1983年、78歳の作品。
弘前で最後の仕事、唯一の斎場。
建築ファン必見の弘前の前川建築。処女作から晩年まで年代を追いながら、それぞれ建築物の特長を楽しめます。建築ファンならずとも、城下町弘前の違った一面を楽しむことができます。お勧めです。
by菊花
写真提供:弘前市役所
弘前市(都市環境部 都市政策課) | |
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場所 | 青森県弘前市上白銀町1−1 |
TEL | 0172-35-1134 |
FAX | 0172-35-3765 |
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