灯台。
海難事故から海人を守る、光の道標。
島国の日本には、3,000を超える灯台があるそうです。
ところで皆さんは、灯台に登ったことはありますか?
2018年6月、青森県下北半島、本州最涯(さいはて)の地、青森県東通村「尻屋」の岬にある「尻屋埼灯台」が、日本の洋式灯台150周年を記念して一般公開されたので登ってきました。
尻屋埼灯台は、青森県天然記念物「寒立馬」の放牧地としても有名な観光スポット・ドライブ定番コースの尻屋埼にあり、春から秋の日中、敷地内に入ることができます。
この尻屋埼灯台、色々な「1番」がある灯台です。
今回は、そんな「1番」を紹介しながら、中の様子もレポート。
1番の1「日本で1番高いレンガ造りの灯台」
尻屋埼灯台は、1876年(明治9年)10月20日に、高さ30mの日本一高いレンガ造灯台として設置点灯されました。
設計したのは、日本の灯台の父と呼ばれた、イギリス人技師リチャード・ヘンリー・ブラントン。
今回の内部公開では、「そのレンガ造り」の構造が見られるよう、壁をくりぬいた所が見学できます。
工事期間は3年4カ月を要したそうです。1つ1つ積んでいく作業は考えただけで気が遠くなります。
入口から入ってすぐの場所で構造を確認して、いざ、階段を上っていきます。
ひたすら上っていると何かの修行のような気分になるので、2つ目の「1番」を。
1番の2「日本で最初の電化灯台」
尻屋埼灯台が設置点灯したのは1876年(明治9年)ですが、それから25年後の1901年(明治34年)、それまで火の光だった灯台から、灯火を電気によって点灯するアーク灯が使用され、日本で最初の電化灯台となった、とのことです。
いよいよ、灯台の上から見る絶景です。
まあ、この風景は確かに絶景ですが、ある意味想像どおり。
ですが、これで終わらないのが尻屋埼灯台。
突然ですが、ここで問題です。
普通、陸から海を見たときに、波はどう動いて見えるでしょう?
答えは「奥から手前に向かって来る」ですよね。
ところがこの尻屋埼では不正解。
正解は「波が左右から来て真ん中でぶつかっている」です。
1番の3「左右から波が来るオンリーワンの絶景が見られる!」
(※潮汐、時間帯、風向きなどにより見られない時もあります)
ウソでしょ?と思うじゃん?
というわけで、こちら(動画)をご覧あれ。
少し分かりにくい?では、時間圧縮(タイムラプス)で。
タイトル回収。これは圧巻ですね。
なんでこんなことが起きているのか。
むつ海洋研究所の研究員の方に聞いてみました。
「この尻屋埼、左は北海道と本州に挟まれた津軽海峡、右は太平洋という場所に位置しています。
潮汐などの関係で変動はしますが、津軽海峡には日本海の暖流「対馬海流」が流れ込み、この尻屋の辺りから太平洋に出ていきます。海洋調査などでこの辺りに出ると、風がないのにとても強い波や流れを感じることが多いエリアです。左からの波はそういった流れから出来る「うねり」かもしれません。
一方、右側の太平洋側は、この地域によく吹く東風「ヤマセ」などが影響しているかもしれません。東風は、太平洋の沖から陸へと波を立たせます。それらに加えて、「尻屋海脚」という、岬の沖まで伸びる浅い海底地形などにより、複雑な潮流が生まれている可能性があります。」
波の動きは海流のほかにも潮汐や風、地形など複雑な要素が絡むので、原因は一概には言えず、時間帯によっては全く違う動きにもなるとのこと。
昔はこのあたりで海難事故が多発したため、建てられたのがこの尻屋埼灯台なのですが、こういった複雑な潮流が原因だったのかもしれませんね。
しかし、日本海からの海流と太平洋の波がぶつかる場所、ということは、まるで漫画「ワンピース」でサンジさんが追い求めている「オールブルー」じゃないですか!
どうりで下北半島の魚は多彩で美味しいわけです。
そんな奇跡の地にある尻屋埼灯台、他にもまだまだ「1番」があります。
1番の4「東北最初の洋式灯台」(1876年)
1番の5「日本で初めて霧鐘が設置」(1877年設置→2年後に廃止)
1番の6「日本で初めて霧笛が設置」(1879年12月20日設置。これを記念し、日本では12月20日が「霧笛記念日」となっている)
さらに、
・日本の灯台50選(1988年・海上保安庁)
・土木学会選奨土木遺産(2006年・公益社団法人土木学会)
・近代化産業遺産(2008年度・経済産業省)
・登録有形文化財(2017年・文部科学省)
・恋する灯台(2017年・日本ロマンチスト協会&日本財団)
など数々の指定を受けていたり、今年2月には、Mr.chirdlen「here comes my love(フジテレビ系 木曜劇場「隣の家族は青く見える」主題歌)」のショートフィルムのロケ地としても公開されたりと、今とてもホットな灯台なのがこの尻屋埼灯台なんですね。
というわけで、今回のレポートは以上です。
完全に忘れてましたが、帰りも128段の階段を下りることになるので、手すりにしっかり捕まって降りましょう。明日の筋肉痛が大確定。
夏休みのドライブに、ぜひ尻屋埼を訪問して、馬に癒されて、左右から波が来る絶景を堪能して下さいね。
下北の美味しくて新鮮な海産物を食べるのも忘れずに!
(byかろ王子)
時間 | 期間 4月下旬~11月上旬(2018年は工事のため9月2日まで) 時間 9:00~16:00 |
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料金 | 参観寄付金 大人(中学生以上)200円 |
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。