青森では雪も降り始める晩秋の11月某日。
時刻は午前5時28分。青森駅に来ました。
なぜこんなところにいるかというと、今をさかのぼること2週間前。
友人から、こんなことを言われたのです。
「下北に旅行に行きたいけど、車が無いと無理だからなー」
青森でいう下北とは、青森県下北地域。
日本三大霊場の恐山や、まぐろで有名な大間町のある、本州最北端の半島です。
筆者は、下北に仕事で2年間住んでいたことがありました。
その時に感じたことは、不便どころか、旅をするにはとっても楽しい所!という印象。
その思いを、友人に、そして、みんなに届けたい!
車が無くても、電車とバスだけで満喫できるよ!
1日でお寺巡りして街歩きして温泉入って大間マグロ食べてうにぎり食べてまた温泉くらいはいけるよ!
というわけで、今回は、車を使わずに、下北を旅するレポートです。
青森駅出発は、5:41、始発の「青い森鉄道」。
日の出前の辺りは、まだ真っ暗。電車には、通勤客がちらほらと乗車していました。
約40分かけて、青森駅から野辺地駅へ。JR大湊線に乗り換えます。
ここから、むつ市内に通学する学生の皆さんがドンドコ乗り込んできます。
そして野辺地を出発して約1時間後。本州最北端の駅、終点の大湊駅に近づいてきました。
7:33、大湊駅に到着です。
ヒバの香りで爽やかな大湊駅舎をダッシュで駆け抜けます。
理由は、駅のすぐ目の前。「大湊吉田ベーカリー」さん。
むつ市民のソウルフード「アンバター」のゲットが目的です。
アンバターを握りしめて、駅に戻ります。
駅前のバス停からJRバス東北さんの路線バス「田名部行」7:39乗車。(12/1からは7:44発に変更になるそうです)
バスは通勤で混み始めたむつ市内を走り、20分後の8:00、田名部駅前バス停に到着。
ここから、旧田名部駅の駅前通りを進みます。
街並みを眺めながら歩くと、数分で、下北交通さんの「むつバスターミナル」に到着。
ここで「佐井線(下り)」のバスに乗車。
ほどなく運転手さんが後からバスに乗り込み、ゼロハチニイマル、ターミナル出発。
北に進み、バスは津軽海峡が見えるむつ市大畑へ。アンバターを食べながらゆっくり風景を見られる幸せ。
乗車から20分後の8:40、ここで本日最初の目的地のある、むつ市大畑の正津川バス停に到着。むつ市に住んでいた時には1度も来たことの無い場所を散策。
ここ正津川は、下北に4本あった恐山の参道の1つ、北の玄関口で、恐山に縁のある多くの神社・お寺があります。
そのまま徒歩でバス停のある旧道に並行に走る国道279号バイパスへ。
遠くに、イカの巨大オブジェが見えてきました。ここが最初の目的地、いさりびハウスさん。
イカの乾物と家用のふのりをゲットして、正津川バス停に徒歩で戻ります。
9:48、ここからちょっとだけ逆走。早朝から活動して冷えた体を温めたい!
で、下北交通むつ線(上り)に乗り、「石神温泉」へ。
すっかりパンダに心を奪われかけました。本題の温泉へ向かいます。
この石神温泉は、昭和63年11月から営業しているそうで、宿泊と、食堂もある温泉です。
さっそく入浴。湯船をよく見ると、浴槽が2つに分かれており、赤字で「あつい」と青字で「ぬるい」の文字が。
知っています。下北の温泉は、本当に「あつい」んです。漁師さんが冷えた体を温めるためだとも。
いくら体が冷えたとはいえ、いきなりプロ仕様の「あつい」湯船に入る勇気はなく、ここは「ぬるい」を選択。
あっつい!!!!!!!!!
いやいやいや、青字でぬるいって書いてるのに熱くて入れませぬよ!一体どうしたらと思っていたら、地元のかたと思われるおじいさんが、浴槽横の水道の蛇口をきゅっとひねって水を出しながら湯船の中へ。
あー、自分でぬるくして入るのね、と納得です。
ちなみにこの温泉には、サウナと露天風呂もあり、露天はちょうどいいぬるさでした。
バスの時間も迫ってきたし、体も十分温まったので、温泉を後にします。
次の目的地は、またも大畑。11:00、かつて下北交通さんが運営していた鉄道「大畑線」の終着駅があった場所。
ここには、2001年まで営業していた当時の駅舎と、使っていた車両(下北交通キハ85系)が走行できる状態を保ったまま保存されています。
ここで、次のバスまで1時間あるので、大畑の町を散策しつつ、大畑で最も大きいお寺「大安寺」さんへ。
敷地の入り口付近で、偶然副住職の長岡さんとお会いしたので、お話しを聞きながら境内を歩きました。
と、副住職からいろいろとお話しを聞いているその時でした。
「そういえば言い忘れてましたが、門の上の所に鬼が居るんですよ。」
えっ!?とびっくりして、門の上を見ると、そこには左右に2体の鬼の像が。
これは、津軽の神社にいる「鳥居の鬼コ」と似ている!?
鳥居の鬼コとは、津軽では鬼が悪者ではなく、地域の人を助けてくれた存在として、守り神のように祀られているもので、神社の鳥居の梁下段の上に立ち、上段の梁を背中や頭などで支えている像のこと。
弘前には鬼伝説のある「鬼沢」という地名があり、そこでは鬼が祭られている鬼神社などもあります。
多くの人が、由来や、どの神社にどういった鬼コが居るか、などを研究しているものなのですが。
神社ではなく、お寺で、しかも津軽から遠く離れた下北に、鬼コがいるのは、もしかしたら大発見なのではないでしょうか。
しかも、背中ではなく手で梁を支えている、通常1体のところが2体いるなど、津軽とは少し違いもあります。
ちょっとした大発見に興奮していると、バスの時間が迫っていたので、副住職にお礼をして大畑駅へ急いで戻ります。
12:10、再び佐井線の上りバスに乗車し、ここから次の目的地までは約50分。お寺からバス停まで走った反動の疲れで、ちょっと居眠りしている間に、いつの間にか次の目的地の大間に着くところでした。
13:01 本州最北端、大間埼到着です。
一人記念撮影もしたので、いよいよ本物の大間マグロ、大間埼にある「魚喰いの大間んぞく」さんへ!
こちらは、築地の初セリで親子2代で最高額をたたき出した「第三十八美吉丸」の竹内さんが営業しているお店。
食べるのはもちろんマグロ丼!と思ったのですが。
大間ではマグロの他に、ウニ、アワビも獲れるということで、メニューにはウニだのアワビだのが載っています。
このうち、ウニは3月に漁が解禁となるとのことで、今は無かったのですが、アワビは揚がっていると。
じゃ、ここは豪勢に!
超新鮮な大間マグロと、どかーんと乗ったアワビのコラボ。まさに至福です。
ゆーっくり味わって食べていると、いつ間にかバスの時間に。
お腹も心も満たされて、14:01、終点の佐井へ向かいました。
そして約30分後の14:33、佐井村の「津軽海峡文化館 アルサス」に到着。夏にうにぎりの取材で訪れた場所です。
コーヒーとおにぎりをいただいてちょっと休憩。戻りのバスまでの時間、佐井村を散策。
そして15:43、折り返しのバス「佐井線(上り)」に乗車。やはり、来た時と同じ車両です。同じ席に乗り、バスは帰路へ。
と思ったのですが、この路線、最終便があと約1時間半後にあるんですね。
であれば、最後に旅の疲れを癒す温泉に入って帰りたい!
ということで、青森を代表する温泉地「下風呂温泉郷」で下車。
普通ならどう考えてもこのまま下風呂温泉に一泊する雰囲気なのですが、この旅の取材中、上司から「明日〆切の仕事が入ったヨ!帰ってきたらヨロシクネ!」的なメールが。
今回は号泣しながら諦めて、日帰り入浴で我慢することにしました。
下風呂温泉郷には、「大湯」と「新湯」という、泉質の異なる2つの公共温泉施設があります。この日は「新湯」に入浴しました。
新湯の泉質は、「含硫黄-ナトリウム-塩化物泉」。源泉温度はなんと、95℃。
当然、湯船は人間が入っても大丈夫な温度になっていますが、それでも熱いんでしょ?と思い、午前の石神温泉のトラウマを思い出しながら入浴。
やっぱり熱い!!!
・・・でも、明らかに温度は高いのに、不思議と我慢できます。なぜだろう。
40年以上新湯に通っているという地元のおじいちゃんに訊いたところ、柔らかい泉質だから熱くても入りやすいんだ、とのことでした。確かにそんな気がしました。
最後に、帰りの最終バス出発まで少し時間があったので、下風呂バス停向かいの「shimofuroカフェ」で休憩です。
以上、とっても長いエントリーになりましたが、下北「電車と路線バス」の旅。日帰り旅です。
車では味わえないディープな下北を全身で体験できて大満足でした。もしかしたら世紀の大発見も。ただ、欲張り過ぎて青森の自宅へ帰宅したのは23時近くでしたが。
仕事さえなければ泊まったのになあ。もう一泊出来たら、もっと多くのバス停で下車して、もっと多くの発見があったんだろうなあ。
というわけで、結論としては、下北、車が無くても十分楽しめますよ~!
(かろ玉子)
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。