世界遺産登録を目指している青森県の縄文遺跡群。そのひとつが岩木山のふもとにあることをご存知ですか? 今回は、縄文人の祈りの場ともいわれている大森勝山(おおもりかつやま)遺跡をご紹介します。
大森勝山遺跡は弘前市の中心市街地から車で30分ほどの距離にある、縄文時代の晩期前半(紀元前1,000年頃)の遺跡です。縄文時代晩期の環状列石(ストーンサークル)の中で全容が明らかになったのはここだけ。縄文文化の謎を解き明かしていく上で、とても重要な遺跡なのだそうです。

この遺跡の素晴らしいところは、何といってもその豊かな自然環境です。樹木に囲まれた静かな道を歩いていると、鳥の声や川のせせらぎが聞こえてきます。足もとにはキノコが生えていたりして、縄文時代の生活環境もこんな感じだったのかなと想像が膨らみます。四季それぞれの景観を楽しめるトレッキングルートです。


木材で作られた階段を上っていくと、いよいよ環状列石のある広々とした台地にたどりつきます。いっきに視界が開けて、前方に岩木山の雄大な姿が現れます。

環状列石のある台地に立って眺める岩木山は、まさに圧巻です。人工物がいっさい視界に入らず、見えるのは山と空と緑だけ。きっと縄文時代の人たちもこれと同じような景観を眺めていたはず。数千年もの時を超えて、縄文時代の人たちとつながったように感じます。
そしてなんと、冬至にこの場所から岩木山を見ると、ちょうど山頂に太陽が沈むのだそうです。縄文時代の人たちが持っていた知識や、天体観測の技術に驚かされます。

大森勝山遺跡が誇る環状列石、じつは現在は保存のために埋め戻されています。実物を見ることができないのは少し残念ではありますが、貴重な遺跡を将来へと引き継いでいくための保存だそうです。解説パネルにある発掘時の写真で、石の配列などを確認できます。

環状列石は楕円形で、最大の直径は48.5m。石を並べる前に地面を削り、それから地面を平にするという、手の込んだ大規模工事が行われたことがわかっています。50cmから100cmほどのサイズの石が全部で約1,200個も使われ、そのほとんどが遺跡の南北を流れる大森川と大石川から運ばれたものだそうです。
弘前市の学芸員さんによると、来年度から環状列石の復元作業を本格化するとのこと。約1,200個の天然石材を、土の下に埋められている石と同じ場所に配置する予定だそうです。しかも、実際に石に触れられるようにするとのお話。忠実に復元された環状列石がどんなものになるのか、完成が楽しみです。

遺跡には大型竪穴建物跡もあります。直径が13mもある、かなり大型の竪穴建物です。ポイントは、この遺跡で見つかった建物跡がひとつだけということ。ここに集落があったわけではないようです。この唯一の建物が何のためのものだったのか、それは解明されていないのですが、何か特別な日に人々がやってくる集会所だったり、シャーマンのような人物が暮らす場所だったりと、いろいろと推測されています。
ストーンサークル・竪穴建物・岩木山、その3つが一直線上にあったというのも、いかにも大事な意味がありそうで、想像力を駆り立てられます。
大森勝山遺跡の出土品の一部は、裾野地区体育文化交流センターに展示されています。遺跡を出発して、車で10分くらいで到着。

裾野地区体育文化交流センター内の展示コーナーには、縄文時代の腕輪、耳飾り、土偶、鉢形土器、円盤状石製品など、見ごたえのある品々がずらりと並んでいます。




人工物から離れた豊かな自然環境を散策できて、ストーンサークルのある台地から岩木山の景観を楽しめる大森勝山遺跡、いかがでしたでしょうか。一度は行ってみる価値のある、おすすめの遺跡です。
by エムアイ
裾野地区体育文化交流センター | |
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場所 | 青森県弘前市大字十面沢字轡8-9 |
TEL | 0172-99-7072 |
時間 | 9:00~21:00 |
料金 | 見学無料 |