青森県つがる市木造に「津軽亀ヶ岡焼 しきろ庵」があります。この土地に生まれた一戸広臣さんが、美濃や京都での修行を経て、1979年に開設した陶芸ギャラリーです。
引き戸をがらがらと開けると、天井の高い開放的な空間に、陶芸作品がずらり。品々の一つひとつに凛とした佇まいがあり、作ることに対する真摯さのようなものを感じます。
亀ヶ岡焼という名称は、一戸さんが自らつけたもの。「京都で修行をしたけど、ここで京焼をやるわけにもなあ・・・」ということで、この土地の名前をつけたそうです。しかし、現在の作風を確立するまでには、かなりの試行錯誤があったとのこと。「どういうのを作ったらいいのか迷って、試しに花の模様なんかを描いてみたりもしてね。でもその花って、亀ヶ岡とは全然関係ないわけ」と笑って話す一戸さん。とくに最初の10年間は苦労が多かったそうです。
亀ヶ岡焼には二つの大きな特徴があります。一つは、亀ヶ岡の土器に見られる雲形紋(うんけいもん)という模様が施されていること。そしてもう一つは、炭化焼成していること。炭化焼成というのは「外側を土器っぽく黒くするため」の工程だそうです。
縄文の模様に惹かれて、私もコーヒーカップを一つ購入しました。表面はざらりとした感触ですが、口に触れる部分はなめらかで、実際にコーヒーを飲んでみたらとてもスムーズ。技術やデザインの見事さもさることながら、きわめて実用的です。まだ使いはじめたばかりですが、この先ずっと愛用し続けることになりそうな予感がしています。
亀ヶ岡といえば、何といっても「しゃこちゃん」の愛称で知られる遮光器土偶ですよね。ギャラリーでは「手作りのしゃこちゃん」も販売しています。目を凝らせば凝らすほど、その驚くべき精巧さに気づかされます。そこそこのお値段にもかかわらず、この遮光器土偶を求めてはるばる遠方から訪れるお客さんもいるそうです。
「しゃこちゃんって、人にロマンを感じさせるみたいなんだよね」と一戸さんは味わい深いイントネーションでゆっくりと語ります。「とくに都会なんかに住んでると、フラストレーションってあるわけでしょ。土偶が悩みを吸い取ってくれるとか、そんなことを言ってたお客さんもいたね」
「縄文のことが好きで亀ヶ岡に来る人って、いろんな価値観とか人生観とかもってるじゃない。そうするとね、自然とお客さんとの対話が生まれるわけ。こっちがお客さんからいろんな土地の話を聞いたりすることも多くてね。旅の疑似体験みたいなことができて、すごくおもしろい」
ブログの取材に来たはずなのに、ついつい幅広い話題で盛り上がって、予定よりも長い時間、このしきろ庵で過ごしてしまいました。
さて、にわかには信じがたいのですが、しきろ庵に隣接する土地には、なんと竪穴住居があります。内部に足を踏み入れると、そこはまさに異空間。ときにはここで宴会を催すこともあるとか。
しきろ庵では毎年このシーズンに干支展を開催しています。今年2019年の開催期間は12月6日(金)から11日(水)まで。来年2020年の干支は子(ねずみ)ということで、ねずみをかたどった作品が販売されます。燃えるような赤や、きらびやかなゴールドが印象的な、とっても縁起の良さそうな商品です。
ぜひ一度、しきろ庵を訪れてみてください。一戸さんが温かく迎えてくれます。一度来てみたらきっとこの場所の魅力がわかると思います。またいつか戻ってきたくなるような、特別な場所です。
by エムアイ
津軽亀ヶ岡焼 しきろ庵 | |
---|---|
場所 | 青森県つがる市 |
TEL | 0173-45-3452 |
FAX | 0173-45-3453 |
時間 | 10:00~18:00 |
Webサイト | http://www.jomon.ne.jp/~sikiroan/index.html |
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。